ストレス/その他のストレス

買い占め、中傷も自分を守る行動?震災後の心理的反応(2ページ目)

東日本大震災は、被災地以外の人々の心にも大きな影響を与えました。買い占め、誹謗中傷、長電話などの問題視された行動のほか、ボランティアなどの模範的行動も、ショックによる心理的反応によるものかもしれません。詳しく解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

買い占めも八つ当たりも「防衛」!? 

sinsai3

電波状況が不安定でも誰かと話さずにはいられない

人は、ある事実を経験して強い不安や欲求不満を感じたとき、その事実に直面して自分の心が強く傷つき壊れてしまうのを防ぐために、「防衛」と呼ばれる反応を起こします。震災によって起こった数々の極端な行動も、人間に備わっているこの防衛機制をもとに考えることができるかもしれません。

たとえば、パニックとも見られるほどの極端な食料品や日用品の買い占め行動は、「今買わなければ!」という購買欲と、それに伴う買い物行動に一時的に熱中することで、過剰な不安から逃避しようとする一種の防衛機制なのではないかと考えられます。

また、芸能人がブログで書いた震災への発言や、首都圏から居を移した人々の行動に怒りをあらわにした言動は、誰かを攻撃(八つ当たり)することで緊張を緩和させようとする防衛機制であると考えられますし、また、震災を免れ不自由なく生活していることへの自責の念や罪悪感は、攻撃を自分自身へ向ける欲求不満反応であるとも考えられます。

では、電話やメール、ツイッターなどを通じて、不安な気持ちをしゃべり続ける行動は、どうでしょう? 「誰かとつながっていたい」と、途端に子どもっぽい甘えが生じ、何かに依存していたくなる退行的な防衛機制であるとも考えられます。


情報収集やボランティアにのめり込むのはなぜ? 

sinsai4

震災情報から朝まで目が離せなくなるのはなぜ?

社会的な問題となった行動だけでなく、一般に「模範的」といわれる行動にも防衛機制が関与していると考えられるケースが見られます。

たとえば、震災情報から朝まで目が離さず、また寝食を忘れて情報を発信するような行動は、実は「今やるべきこと」から避けるために、震災情報にのめりこむという、知性化の防衛機制が働いているのかもしれません。

また、募金活動やボランティアに夢中になる行為は、現状に満足していない自分自身を、別の望ましい行動によって補償しようとする防衛機制による行動なのかもしれません。

知性化や補償のような防衛機制は、肯定的に働くことによって、自分自身の新たな生かし方を見つけられることもあり、合理的な結果へと結びつくこともあります。


心身の健康、行動のバランスが大切 

連日の報道で想像を絶する震災の現実を目の当たりにし、さらに余震や停電、放射能災害などによって不安が掻き立てられるような日々が連日のように続いたため、多くの人にこうした防衛機制が働いたのも自然な現象だと思います。

しかし、防衛機制による反応が行きすぎてしまうと、個人の行動のバランスを崩し、また物資の不足や経済の混乱といった、社会的な問題にも結び付いてしまいます。また、震災のストレスによって、自らの健康を害してしまっては元も子もありません。

したがって、極端な行動変化やつらい症状に気づいたときには、他のリラクゼーション方法(たとえば呼吸法、アロマセラピー、音楽など)も取り入れたり、意識的にしっかり休養をとったりすることで緊張を解消させることも大切です。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます