今後、平穏な街に未曾有の大震災がおこる可能性もある
こうした天災事変(地震)は、緊急地震速報などがあっても、直前にしか分からないためあらかじめ予知ができないのが特徴です。今回の大地震であらためて、日本は地震国であること、また天災事変は企業における重大経営リスクであることが浮き彫りになりました。今まさに、リスクを洗い出し、緊急事態に備えた組織を作っていくことがいかに大切なことであるか痛感します。今回は、企業における労務リスク対策を解説します。
企業を守るのはまさに経営者。人事責任者は現場で実際の指揮を執っていく担当者です。各部署の従業員も含め全社的なリスク教育の定期的実施で、連帯感を高めていく責任があるのです。
企業における労務リスク対策
企業は、「ヒト・モノ・カネ・ジョウホウ」といった経営資源で成り立っています。その中でヒトは、最上位に位置します。今般のような天災事変が起こった際に、会社の存続を左右する司令塔および実務担当者となるのが、まさに「ヒト」ですから、日頃からの労務リスク対策は欠かせません。人事労務決裁権者をリスクマネージャーに
企業の規模は、大企業から中小企業まで様々ですが、天災事変は規模に関わらず降りかかってきます。そのため、企業の経営活動を管理するリスクマネージャーの存在が欠かせません。企業によって、代表取締役であったり総務部長(総務部門の責任者)などがこの担当となることが多いことでしょう。企業における人事労務管理に関する決裁権限を持っている管理者が選任されることがポイント。企業は組織体ですから、指揮命令系統が確立されていないと緊急時に混乱が生じます。決裁権者から適切な指示で統一行動をとっていくことです。担当マネージャーに、いざ事象が起こった時には本社機能を含めた支店、営業所などの従業員の安否情報などを集約していきましょう。情報収集と発信を一元化することで、混乱を未然に防ぐことができます。
今回の大地震では、一部の情報サイトやブログ、メールなどで多くの不適格情報が錯綜し、直後はかなり混乱したことも教訓になります。
定期的な教育・訓練を実施
企業におけるリスクマネージャーは誰なのか、社内周知をしておきましょう。労務リスク対策の教育をしていく際には、担当マネージャーを中心に社内教育をします。本来は、従業員全員による合同教育が望ましいのですが、企業の実情により全員参加が難しいこともあるでしょう。その場合でも各部門や営業現場の管理職クラスを参加させましょう。そうすることで危機管理の意識を社内に浸透させるのです。定期的(年1~2回程度)に教育の機会を設けることで、リスクマネージャーへの信頼が強まります。教育・訓練をしていると、いざ緊急事態が発生した際には、マネージャーを中心に対処していくことができるようになります。慌てふためいて、バラバラに行動してしまうことは一番避けなければならないことです。
企業の業態や規模などで、リスク教育の内容は変わります。労務管理リスクの観点からは、天災事変だけのリスク対策教育だけではなく、企業経営における様々なリスクも合わせて対策をとっていきましょう。
天災事変(地震、津波、台風、落雷など)、企業の倒産、株価暴落、労災事故、テロ、企業の法令違反、公害、セクハラ、欠陥商品、IT機器のシステムダウン、不正アクセス、行政からの業務停止命令、うわさ(誹謗中傷)、近隣住民とのトラブルなど、挙げればきりがありません。
天災事変は、企業活動そのものをいきなり停止させてしまうほどの最大リスクと言っても過言ではないでしょう。このたびの事象の経験を踏まえ、まずは天災事変に対するリスク対策から始めましょう。
次のページは、労務管理リスクマニュアルの整備と見直しと緊急連絡網の整備について解説します。