セクシュアルマイノリティ・同性愛/ゲイライフ

セクマイ中高生を支援する歌川泰司さんの思い(3ページ目)

セクシュアルマイノリティの中高生を支援するサイト「君のままでいい.jp」を立ち上げた歌川泰司さんへのインタビューをお届けします。歌川さん自身の子どもの頃の経験や、立ち上げにいたった経緯、その思いについて語っていただきました。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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全国的なカミングアウト

歌川泰司

 

——そんなフォビアを抱えた歌川さんが、全国にカミングアウトするほどオープンになったのはどうしてなんでしょう?

過剰なエネルギーが出てるから、会社でもすぐにバレちゃって(笑)。オープンにならざるをえなかったんです。

——(笑)職場にいづらくなるんじゃないか…というような恐怖心はなかったですか?

僕もやっぱそういうことは怖かったんで、常に仕事上でスターでいなければいけないと思ってた。リクルートで営業やってたんですが、入社1年目から業績ではトップを取って、宴会では明菜の「デザイア」とか歌って盛り上げて。地方の支社まで名前が轟いてた。仕事で一目置かれる存在にならないとだめだろうと思ってたんです。みんな20時に帰るところを23時までがんばったり。仕事が終わってから宴会の席に行ったり。当時はですけど、そのくらいゲイであることをハンデだと感じていたんです。

——仕事でも成績を上げて、人気者になって、有無を言わさず、ゲイでもいいんじゃない?っていう空気を自力でブルドーザーのように切り開いたんですね。努力の賜物であると同時に、歌川さんのスーパーマン並みのパワーがあればこそ。All About[同性愛]も、歌川さんがいなかったらできなかったんじゃないでしょうか?

心の中ではゲイである自分を責めてたけど、人とは仲良くなりたい。じゃあどうやったら仲良くなれるか?ってことを、トライ&エラーを繰り返しながら常にやってきた。20代だったから失敗もいっぱいあったけど、それでもつながりを大事にしてきた。世界の隅っこに独りっきりって、耐えられない。でも当時はフォビ子だった自分に、ゲイの世界につながりは求められなかった。だから、自分はノンケの世界でお互いを理解して親和的にやっていこうと思った。そういうのがAll About[同性愛]につながった。

——新聞にもバーンと本名と顔写真が出て。あれは当時としてはものすごいインパクトがありました。全国的にカミングアウトするって、すごい勇気が要ることだったと思います。

あの新聞広告は聞いてなかった(苦笑)。でも、22歳のときからずっとトライ&エラーを繰り返しながらオープンリーゲイとして周りとうまくやってきたし、大人の世界では受け入れられるキャラになってれば大丈夫だっていう確信が持てていたので、受けて立ってやると思っていました。

——経験に裏付けされた自信があったんですね。

自分にはできると思ってました。そして、自分のようにはカムアウトできない人たちの気持ちを理解しなくてはと思っていました。

——一方で、パレードやレインボー祭りの実行委員をやったり、コミュニティ活動もものすごく熱心にやるようになりました。それ以前はコミュニティと距離を置いていたと思いますが…何か転機があったんでしょうか?

2001年、All About[同性愛]を立ち上げたときには、これからはコミュニティに目を向けるって決めていて、レインボー祭りの実行委員もやって、パレードにも参加しました。20代のときはずっとフォビ子で、自分がゲイであることへの嫌悪感が拭えなかった。でも、それはやっぱりさびしいことだと思っていて。伏見憲明さんが初めて「君はそのままでいいんだよ」と書いてくれて。80年代にはそういう本なんてなかった。

——たしかに、なかったですね…。

あるのはエロの情報か、難しすぎてわからない『ユリイカ』とか。自分に届くメッセージってまったくなくて。90年代にそういう動きがあって、うれしかった。自分を許してもいいような気持ちになったし、他のゲイの人も許せるようになった。それと、大塚隆史さん主催の「エドエイツ」というスクエアダンス・サークルに参加するようなって、コミュニティっていいなと初めて実感できた。

——ゲイの人が集まってワイワイやってる場所っていうのを経験して。

そこで方向がガラっと変わった。フォビア感情がじゃまして気づいてなかったけど、フォビアの壁が取れたときにバーっとやりたくなったんだと思う。

——その時期に一気に物事がワーっと広がったんですね。風船の中に空気がたまっていたのが、パンとはじけたような。

あの頃はゲイコミュニティに求心力があったしね。みんなでやれば何かできるという思いをみんな抱いていた。

——いずれにせよ、歌川さんがゲイにとっての1つのロールモデルになったことはまちがいないと思います。「僕はこのままでいいんだ」と勇気づけられた中高生もいたはずです。
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