世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

バチカン市国:カトリック10億人の聖地(4ページ目)

バチカン市国は世界最小の国であり、生まれ育った国民を持たず、世界で唯一国土のすべてが世界遺産に登録されている不思議な国。それでいて面積の大半を占めるサン・ピエトロ大聖堂やバチカン美術館は世界屈指の観光名所でもある。今回は、キリスト教カトリックの総本山であり、ルネサンス・バロック期の巨匠たちが築き上げた芸術都市でもある世界遺産「バチカン市国」の見どころや歴史を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

世界でもっとも美しいチャペル、システィーナ礼拝堂

システィーナ礼拝堂の天井画のひとつ、ミケランジェロ『アダムの創造』

システィーナ礼拝堂の天井画のひとつ、ミケランジェロ『アダムの創造』。スティーブン・スピルバーグ監督の映画『E.T.』のポスターのモデルといわれる

システィーナ礼拝堂はその名の通り礼拝を行う場所で、教皇を選出するコンクラーベもここで開催される。

なんといってもすばらしいのは祭壇から天井にかけての絵だ。これらはミケランジェロがたったひとりで描いたといわれる作品群で、『旧約聖書』の「創世記」からアダムの創造、大洪水、最後の審判など9つの場面を描き出している。
バチカン宮殿とシスティーナ礼拝堂

サン・ピエトロ大聖堂のクーポラから見下ろしたバチカン宮殿。下の長方形の建物がシスティーナ礼拝堂

また、側面にもボッティチェリの『反逆者たちの懲罰』『モーセの生涯の出来事』をはじめ、『旧約聖書』や『新約聖書』の物語が描かれている。

この空間、私は大好きだ。神を求めた人間の思い、正しくあろうとした人々の知恵、美を追求した芸術家の意志、そして人類が到達した究極の美、こうしたものがこの空間に充満しているからだ。できれば個人で訪ねて、思う存分堪能していただきたい。

[関連サイト]

バチカン市国への道

ローマのサンタンジェロ城から見たサン・ピエトロ大聖堂

ローマのサンタンジェロ城から見たサン・ピエトロ大聖堂。両者は地下道でつながっているという伝説が残っている

■エアー&ツアー情報
バチカンはローマ市内にあるので旅の起点はローマ。アリタリア航空が成田から直行便を出しているほか、ミラノやモスクワ、イスタンブール、北京、上海、ソウルなどを経由するさまざまな便がある。格安航空券で8万円前後から。ツアーは7日間20万円前後から。

ローマのさまざまな場所から地下鉄やバスが通っているほか、サンタンジェロ城やパンテオンなどからなら徒歩でも行ける。パスポートやビザのチェックも特にない。
バチカン宮殿の警護を担当するスイス衛兵

軍事力が存在しないバチカンで宮殿の警護を担当するスイス衛兵。衣装はミケランジェロによるルネサンス期のデザインを20世紀はじめに再興したもの

■周辺の世界遺産
ローマには世界遺産「ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂」があり、近郊にはローマ皇帝の庭園「ヴィッラ・アドリアーナ(ティヴォリ)」、ルネサンスの噴水庭園「ティヴォリのエステ家別荘」、ローマ帝国以前の遺跡である「チェルヴェテリとタルキニアのエトルリア古代都市群」がある。

また、ローマからは世界遺産のあるフィレンツェやピサ、ナポリなどにも日帰りツアーが出ている。
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