「御菓子司 中里」の「揚最中」
「最中は甘党のもの」。東京・駒込「御菓子司 中里」の「揚最中」を知るまでそう思い込んでいました。甘いものより塩味のものが恋しいときに食べたくなる不思議な最中。油で揚げているのに、通常の最中よりもむしろさっぱりと感じられるのはなぜでしょう。
「御菓子司 中里」お菓子は3品のみ!
大正12年から東京・駒込で和菓子店を営む「御菓子司 中里」。現在は4代目鈴木俊さんご夫婦と弟さん、息子さん、娘さんのご家族5人だけで店を切り回します。30数年前に長年勤めた職人さんたちが辞めてからは上生菓子を止め、品数をグッと絞ったそう。季節により錦玉羹や水羊羹、栗蒸し羊羹が並ぶこともありますが、基本的には「揚最中」、「南蛮焼(小豆の粒あん・うぐいすあん)」、「ぶどう餅」のいずれも個性的な3品のみが同店のお菓子です。このうち南蛮焼のうぐいすあんとぶどう餅は夏季(6月中旬~9月のお彼岸まで)はお休み。潔いほど少数精鋭です。
「揚最中」お酒に合う稀有な最中
息子さんにも同席していただき、「揚最中」の作り方を教えていただきました。簡単にまとめると「白焼きの最中種(皮)に、水溶きの小麦粉を刷毛で薄く塗り、高温の胡麻油で5秒くらい揚げ、すぐに塩を振る。2枚の皮で自家製の粒餡を挟んで完成」というもの。作っている間は通りにまで香ばしい香りが流れます。出来たては見るからにパリッとし、表面の伊豆大島産の塩がキラキラと輝き食欲をそそります。口に入れると香ばしさが舌の上で踊り出しそう。水分を飛ばし固めに煉り上げられた自家製の粒餡は、皮の個性に負けない力強さがあります。心地良い香ばしさに加え、大きさも塩加減も程好いためか、くどいどころかあっさりとした感じさえ受けます。
揚最中は一度食べると癖になるようで、定期的に無性に食べたくなり、お店へ出かけます。その際に何箱か余分に求め、お酒の席に差し入れたり、塩味のおつまみしか好まない人に贈ってみたり。酔った人にも、甘党ではない素面の人にも歓迎される、稀有な最中なのです。
ところで、揚最中も通常の最中と同様に、時間が経てば皮は湿気を帯びてきます。もし皮が湿ってしまったら、ぜひともフライパンやオーブントースターで軽く温めてからお召し上がりを。香ばしさが戻ります。ただし、基本的には他の揚げもの同様、出来るだけ早く食べるのがおすすめです。
揚最中が考案されたのは80年以上も前。個性的でありながら、飽きられることなく長年愛され続けるというのは、理想ですが大変なこと。あやかりたいな、と思いつつ、揚最中を味わいます。
「御菓子司 中里」のお話は、次回「南蛮焼」と「ぶどう餅」へと続きます。どうぞお楽しみに。
<店データ>
■「御菓子司 中里」
所在地:東京都北区中里1-6-11 中里SUZUKIBLD
電話番号:03-3823-2571
営業時間: 9:00~19:00(平日)、~17:00(土・祝日)
定休日:日曜日
地図:御菓子司 中里
アクセス:JR山手線駒込駅東口より徒歩約1分、または東京メトロ南北線駅3番出口より徒歩約4分
<百貨店等販売情報>
※いずれも数に限りがありますのでご注意下さい。また、内容は予告なく変更することがあります。
◎「高島屋」地下1階銘菓百選
日本橋店;毎週火・金曜日
(揚最中2個・南蛮焼2個の詰合せ840円)
新宿店;毎週火曜日
(揚最中2個・南蛮焼2個の詰合せ840円、揚最中6個入1,080円、ぶどう餅1箱1,100円)
玉川店;毎週土曜日
(揚最中2個・南蛮焼2個の詰合せ840円、揚最中6個入1,080円)
◎「三越」地下1階菓遊庵
日本橋店;毎週金曜日(揚最中6個入1,080円)
銀座店;毎週金曜日(揚最中6個入1,080円)
◎「西武百貨店」地下1階諸国銘菓
池袋店;毎週土曜日(揚最中6個入1,080円、3個入540円)