これは外せない!「麸万頭」
明治8年創業の金沢の麸の専門店「加賀麸司 宮田」。国産の小麦グルテンと国産の餅粉で麸を作る貴重なお店です。今は「麸まんじゅうの素」のような素材があり、麸万頭を作る和菓子店も増えてきたのは嬉しい限りですが、やはり専門店のものはひと味もふた味も違います。滑らかでコシがあり、弾力があり瑞々しい。本式で作られた生麸ならではです。さて、同店の「麸万頭」は、餡を包んだ生麸を笹の葉でくるんだもの。柚子風味の白餡を包んだ「ゆずあん」と、青のりの香る生麸でこし餡を包んだ「こしあん」があります(※季節により「桜麸万頭」(2月~4月中旬)、「栗麸万頭」(9月~11月上旬)もあります)。
笹の葉の緑に誘われて口に運ぶと、つるりと瑞々しくあっさりとした甘さ。淡白な生麸の持ち味をそのまま生かし、過度な風味を付けないところが清々しい。重たい食事の後でも、不思議なほどするすると入るので、お食事会の持ち寄りで悩んだ時にはいつもこれ。間違いなく歓迎されます。
温かい麸のお菓子「おやき」
私の好きな生麸の食べ方に、食べやすい厚さにカットしたものをオーブントースターで焼き、小豆餡を絡める、というものがあります。ただし時として、生麸と餡が馴染まずに、淡泊な生麸と甘い餡が、口の中でそっぽを向き合う、という残念な結果になることも。このストレスを解消してくれたのが、同店の「おやき」。生麸によもぎ、あるいはごまを混ぜ、十勝産の大納言の粒餡を入れて焼いたものです(※季節により「栗おやき」(9月~11月上旬)もあります)。自然解凍でそのまま食べてもよいのですが、ぜひともオーブントースターやフライパンで焼き直すことをおすすめします。表面は芳ばしく、中はふっくら柔らか。独特の弾力もしっかり楽しめます。何よりもポイントは温かい、ということ。餡がとろりと柔らかくなり、全体が口の中でとろけるよう。ぬくぬくと温まる麸のお菓子。麸万頭にはない魅力です。
同店では、定番の生麸各種や焼麸、細工麸に加え、生麸の「昆布巻き」や「生麸 フライ」、「麸のとんかつ粉」、「麸のハンバーグ粉」、「麸のかりんとう」など、興味をそそられるものが揃います。奥が深そうな麸の世界。未知の使い方も多そうです。ちなみに、つみれの種に麸のハンバーグ粉を加えたら、しっとりふっくら仕上がりました。嵩増しにもなったよう。麸は目立たない実力派。見直したい素材です。
■「加賀麸司 宮田」本店
住所:金沢市東山3-16-7
電話:076-251-0071
オンラインショップ:加賀麸司 宮田