世界遺産登録数1978~2019年の移り変わり
世界遺産登録がはじまった1978年以降の登録数の推移を見てみよう。- 1978年:12件
- 1979年:45件
- 1980年:28件
- 1981年:27件
- 1982年:24件
- 1983年:29件
- 1984年:23件
- 1985年:30件
- 1986年:31件
- 1987年:41件
- 1988年:27件
- 1989年:7件
- 1990年:17件
- 1991年:22件
- 1992年:20件
- 1993年:33件
- 1994年:29件
- 1995年:29件
- 1996年:37件
- 1997年:46件
- 1998年:30件
- 1999年:48件
- 2000年:61件
- 2001年:31件
- 2002年:9件
- 2003年:24件
- 2004年:34件
- 2005年:24件
- 2006年:18件
- 2007年:22件
- 2008年:27件
- 2009年:13件
- 2010年:21件
- 2011年:25件
- 2012年:26件
- 2013年:19件
- 2014年:26件
- 2015年:24件
- 2016年:21件
- 2017年:21件
- 2018年:19件
- 2019年:20件
近年目立つのが「逆転登録」だ。文化遺産候補地についてはイコモス(ICOMOS:国際記念物遺跡会議)、自然遺産候補地についてはIUCN(国際自然保護連合)、複合遺産については両者が専門的な調査を行って評価報告書を作成し、これを参考に世界遺産委員会が正式な決議を行う。イコモス、IUCNはそれぞれ文化遺産と自然遺産に関する専門家集団で、推薦された物件を科学的に調査して以下4段階の勧告を下している。
- 登録:世界遺産リストにふさわしい
- 情報照会:3年以内に追加資料を提出すれば再審議が可能
- 登録延期:推薦書を取り下げて登録プロセスを最初からやり直し
- 不登録:登録にふさわしくない。決議された場合、再推薦も不可
たとえば2018年の第42回世界遺産委員会では19件が世界遺産リストに登録されているが、このうち8件もの物件が不登録や情報照会、登録延期勧告を覆して逆転登録に成功している。特に不登録勧告は価値の否定に近いもので、専門家の下した判断を簡単に覆すことに対する非難も少なくない。
イエスが生まれた場所に建つとされるパレスチナの世界遺産「イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会」。ベツレヘムでは分離壁問題などイスラエル-パレスチナの対立が続いている (C) Neil Ward
これ以外にも、世界遺産を保有していない国の推薦は逆転が起きやすいなど非科学的な決定がしばしば指摘されており、世界遺産リストの代表性(世界の傑出した文化や自然の遺産を正しく代表していること)や世界遺産リストの信頼性が揺らぐとして大きな問題になっている。
日本の物件については、2007年の「石見銀山遺跡とその文化的景観」まで14件連続で一発登録だった。しかし2008年の平泉において、日本国内で価値があることは認められたが、それが世界基準の価値であることが証明されていないとされ、構成資産が適切か否かも問題となって登録が延期された(2011年に再推薦して登録)。
2009年と2011年には国立西洋美術館が6か国の作品をまとめた「ル・コルビュジエの建築作品」のひとつとして推薦されたが、これも登録に至らなかった(再推薦して2016年に登録)。2013年には「武家の古都・鎌倉」がイコモスから不登録勧告を受けて推薦を取り下げ、2016年にはイコモスからコンセプトを変更すべきとの指摘を受けて「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の推薦も取り下げている(再推薦して2018年に登録)。
近年続くこれらの失敗から、世界遺産登録の難化が指摘されているが、本当に難化しているか否かについては議論がある。ピラミッドや万里の長城、イエローストーンやガラパゴス諸島のように、誰もが価値を認めるわかりやすい物件はすでに登録されてしまっており、難化というよりも推薦物件のレベルが下がっているという指摘もある。
世界遺産活動は、世界遺産リストに物件を登録することが目的なのではなく、リストに登録された世界基準のすばらしい遺産を永遠に守ることを目的とする。2014年には千件を突破し、世界遺産委員会という小さな組織がそのすべてを管理することは困難で、本当に価値ある遺産、守られるべき遺産を確実に守りたいという意志が、登録を絞る方向に向かわせているという一面もあるようだ。
このため世界遺産総数に上限を設ける話もたびたび議論されており、今後の対応が注目される。
<世界遺産の数と国別ランキング>