世界遺産数の不均衡是正に向けて

富士山

自然遺産としての価値ではなく、文化的景観を全面に押し出して世界遺産登録を目指す「富士山」

ヨーロッパへの世界遺産の集中、文化遺産の登録過多、世界遺産非保有国の存在など、どうやら世界遺産の数には不均衡があるようだ。ユネスコもこれを問題視しており、たとえば以下のような対策がとられてきた。これらの決定は随時見直されており、今後も様々に検討されることになる。
  • 1年あたりの審査件数を45件までにおさえ、非保有国や新分野の遺産登録を優先する
  • 世界遺産の新規登録は1か国2件まで、2件の場合、1件は自然遺産か文化的景観でなくてはならない。複数国にまたがるトランスパウンダリー・サイトの場合、主導国の推薦枠を使用する
  • 世界遺産を多数保有する国は自主的に間隔をあける
  • 世界遺産リストに十分に表されていない遺産のカテゴリーや、関係する物件を複合体として登録するシリアル・ノミネーション、複数の国からなるトランス・バウンダリー・サイトなどに焦点をあてる
  • 無形遺産が多い非先進国にかんがみ無形文化遺産条約を発効させる
バウハウス、デッサウ校

20世紀建築を代表するヴァルター・グロピウス設計のバウハウス、デッサウ校。ドイツの世界遺産「ワイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」登録物件だ

1994年にはそのひとつの指針として「世界遺産一覧表における不均衡の是正及び代表性・信頼性の確保のためのグローバルストラテジー(The Global Strategy for a Balanced, Representative and Credible World Heritage List)」が採択されている。

ここでは、以下の5分野の世界遺産が多すぎるとして、この不均衡を是正するために新たな価値観を持って世界遺産を見直していこうという宣言がなされた。

 
  • ヨーロッパの物件
  • 都市と信仰に関する物件
  • キリスト教に関する物件
  • 先史時代と20世紀以外の物件
  • 優品としての建築物件
そして、現時点で研究が進んでおり、新たに世界遺産としての価値を見出し保護するよう以下の種別が提示された。
  • 産業遺産
  • 20世紀建築
  • 文化的景観
石見銀山

文化的景観、産業遺産両面が評価された「石見銀山遺跡とその文化的景観」

最近登録された日本の世界遺産や、あるいは今後世界遺産を目指す暫定リスト記載の物件はこの3つを掲げるものが多く、たとえば2004年登録の「紀伊山地の霊場と参詣道」は文化的景観、2007年登録の「石見銀山遺跡とその文化的景観」は文化的景観と産業遺産、暫定リストの中では「富士山」が文化的景観、「富岡製糸場と絹産業遺産群」は産業遺産、「国立西洋美術館本館」は20世紀建築を前面に押し出している。

世界遺産の登録数やその内容は毎年活発に論議され、少しずつ形を変えている。今後も注目していく必要があるようだ。

 

<世界遺産の数と国別ランキング>
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