バラエティに富んだプリフィクスメニュー
前菜の人気メニューでもあるビーツとスモークサーモンのレムラード。ビーツのヴィヴィッドな赤が印象的な一皿だ。料理は見た目で70%の美味しさを表現すると言われているが、この皿が運ばれると視覚が食欲に直結しているな、ということがわかるだろう。赤いビーツはクリーム状のレムラードと重なると味わいがより複雑に五感に染み渡る。ビーツの赤に食欲がぐぐっと高まる。
ピエ・ド・コション(豚足)のカルパッチョは内臓好きにはたまらない前菜かもしれない。レンズ豆の食感とヴィネグレットの風味が心地良いのだが、さらに美味しさを追求したいのなら料理に合う白ワインが必要だ。グラスでも数種類用意されているので、こういう時にこそソムリエに相談したい。
内臓好きにはオススメしたい一皿だ
スペシャリテは鴨肉のローストとそのパイ包み焼き。パイの中に仕込まれた腿肉とフォアグラと共に、色は濃いが味わいはしつこくない現代風赤ワインソースがほんのりとマリアージュを醸し出す。メインはこのほか牛頬肉の赤ワイン煮込といった定番品から静岡の富士鶏のワイン蒸し、冬の季節ならではのエゾ鹿のポワレなど選ぶのにかなり悩みそうなラインナップ。
パイの中にはフォアグラが隠されている。
前菜は全体的にボリューム感がもう少し欲しいところだが、メインが比較的がっちりとしているのでトータルでの満足感はそう悪くないだろう。
シェフの梶原忠氏は大手ホテルチェーンのシェフとして腕を振るい、フランスの有名料理コンクールの日本代表選考のファイナリストまでいった実力派。パリ本店での修行を経て立ち上げから料理長として腕を振るう。
鹿肉の赤身はぜひボルドーワインと合わせたい
サービス陣もフレンドリーで畏まったところがなく、付かず離れず居心地の良さを演出している。開店してからしばらく経ったのでオペレーションもスムーズに回ってきたと思われる。
ワインは自然派を中心に過不足なく揃うが、値付はやや高目か。コース5000円ならその近辺の価格帯のものを揃えてほしい気もするが、5000円以下のものもないわけではなく、それなりに逃げ場が用意されている。銘柄群はフランスの本店の意向が取り込まれていると聞くが、そのうち東京市場にマッチしたものに変わっていく可能性はあるだろう。
商業施設における新規店舗は最初は積極的なPRが功を奏し、話題になることが多いが、1年もするとそういった効果は薄れ、3年で店舗の多くは替わっていくのが常である。六本木ヒルズ、丸の内辺りの大規模商業施設などを見てもしかり。
ブール・ノワゼットは料理人の基礎能力、感性、バランス感覚がとてもよく、パリ店の料理の進化を上手に引き継いでいけば、まだまだ伸びしろがあるようだ。三越の中のビストロというのではなく、あくまでブール・ノワゼット・トウキョウがたまたま銀座三越の中にあるというように思われることを目指してほしいものである。
ネオ・ビストロとして5000円でこれまでの8000円程度の料理が楽しめるとしたら、これはこれでフランス料理の裾野が広がっていくことは明らかだ。
オールアバウトフレンチの食にこだわる読者の皆様には十分にオススメできるレストランである。休日のランチは混みあうので平日前半のディナータイムを狙いたい。
ル・ブール・ノワゼット・トウキョウ(銀座三越12F)
東京メトロ銀座線・日比谷線「銀座」駅より徒歩1分
地図
電話番号:03-6228-6913
営業時間
ランチ 11:00~16:00(L.O.15:00)
ランチコース 3500円
ディナー 17:00~23:00(L.O.22:00)
ディナーコース 5000円 シェフのオススメフルコース 6500円
別途サービス料あり
無休(三越の定休日による)