天下りのズルい退職金課税強化はいいのですが……

毎年、12月15日頃には、来年の税制改正の方針が明らかになります。そのための議論が今は行われており、いろいろな可能性が報道されています。その中に退職金の課税の強化があるようです

今のところ指摘されているのは「天下りの『渡り』」をこらしめる、というものです。「渡り」というのは、天下りしたあとのポストを数年おきに転々として、何百万円(というかケースによっては一千万円超も大いにありうる)の退職金を何度も受け取ることだそうです。確かに、こういうズルい退職金については課税がされてもいいような気がします。

しかし、しっかりチェックしておくべきは退職金に対する課税の強化の方向性です。実は退職金はほとんどの場合、全額非課税で受け取れる優遇があり、これについて国はいつかは課税したいと考えているからです。本来なら、団塊世代が退職金を受け取る5年前には課税強化をしておきたかったのですが、それはうまくいかず、ここしばらくは目立った課税強化が行われずにきています。しかし、おそらくいつかは課税強化に踏み切ることでしょう。

今年は、今のところ筆者が見る限りでは、課税強化は避けられそうな雲行きのようですが、いくつか報道で気になることがあります。それはむしろ勘違いに近い点も含まれています。あるいは、全く気がついていないのではないか、という項目もあるようです。
そこで、「退職金課税で考えるべき正しいポイント」についてまとめてみたいと思います。

長期勤続優遇の退職金課税はおかしい

まず、退職金税制でもっともおかしい点は「長期勤続優遇」であることです。現在の退職所得控除の計算は、「勤続20年まで」と「勤続20年以上」で非課税枠が異なります(20年までは毎年40万円、それ以降は毎年70万円ずつ増える)。これは長期勤続をすると退職金の受取額が増えることに応じて非課税枠を設定したためらしいのですが、結果として会社員を同じ会社に長く縛り付ける役割を国が税制で支援しています。本来、「会社が長期勤続を優遇する」工夫をするのと「国が長期勤続を奨励する」のとは関係がない話です。