ボルドーワイン専門のブラッスリーへ
遅めの晩飯を摂るために行ったのは、『ラ・ブラッスリー・ボルドレーズ』という、大テーブルがある食堂だ。ボルドーワインが百数十種類とコニャックやアルマニャックが数十種類常備され、定番料理から地元特産のバザ種のステーキまで手頃な値段の料理が豊富である。こんな店なら、ボルドーのワイン業界関係者が足しげく通うというのもなるほどと思わせられる。
にぎやかな繁華街にある『ラ・ブラッスリー・ボルドレーズ』
テーブルに着くと間もなく出してくれたのは、黒豚の生ハムやソーセージ。どーんと気前よく盛り付けられた生ハムには小さめの丼一杯のキュウリのピクルスがついてくる。塩気と旨味たっぷりで、ワインがすすむ。これだけで済ましてしまう酒飲みもいそうだが、これは今夜、ほんの付き出しなのである。
黒豚の生ハムとピクルス
次に出たのはブラッスリーの定番料理、豚の田舎風テリーヌだ。薄切りというより厚ぼったく切ったものを三角に切りそろえて豪快に盛り付ける。これもピクルスをつけてくれるから、脂肪とコクがたっぷりあるテリーヌと交互に食べると口中がリフレッシュされるというわけだ。テーブルに置かれたパンかごから、またたくまにパンが消え、ワインが急ピッチで喉の奥へと消えていく。
たっぷりと盛られた豚の田舎風テリーヌ
この日飲んだ赤ワイン、シャトー・グランド・サヴール2008年は、法律上の区分でいうとACボルドーのひとつ格上、ACボルドー・シュペリュールにあたる。最初はやや風味が閉じていたのが、ぐいぐいと飲み干すにつれて、しなやかな果実味やほろ苦い風味が浮上してくる。それにしてもこの店は、サービスが良い意味で自然体といったらいいのか、大ざっぱで茶目っ気があるのだが、要所できちんと気を利かせてくれるのがいい。混み合った時には料理やサービスに時間がかかることもあるのだが、客は気にもかけずお喋りに花を咲かせている。それで結構。ブラッスリーかくあるべし、である。