ケルン大聖堂に入ってみよう!
身廊から内陣方向を見上げる。柱と柱に囲まれたアーチとその空間をアーケード、ステンドグラスがはめられたその上の高窓をクリアストーリーという ©牧哲雄
これがゴシックだ。
朝、十字架の頭にあたる東の内陣から入る陽光は、ゆっくりゆっくりと神の物語を描いたステンドグラスの一枚一枚を照らしながら少しずつ西に移動し、やがて十字架の下部にあたる身廊から大地の底へと沈んでいく。
街から眺めるとケルン大聖堂の威容がいっそう際立つ
大聖堂とは、その建築、その装飾、その歴史、その意義を誇るものでなく、色や形、時間や空間の神秘を見つめる場であり、人間の五官を通じて神と交流を持つ場なのだから。
ケルン大聖堂と景観問題
ゴシック様式のケルン大聖堂(左)と、ロマネスク様式の聖マルティン教会(中央)
この決定は驚きをもって迎えられた。というのは、この高層ビルが大聖堂から1kmも離れた場所にあり、また大聖堂は「文化的景観」など景観を登録理由にしていたわけではなく、ビルの予定地は世界遺産のプロパティ(登録範囲)に含まれているわけでもなかったからだ。大聖堂周辺には近代的な駅や博物館、商店街もできており、1kmも離れたビルがいまさらどのように影響を与えるのかなどと、ユネスコに反発する声も多かった。
神々しいまでに輝くケルン大聖堂
これまで、エジプトのピラミッドやブラジルのイグアスの滝など、世界遺産周辺を通る道路計画が持ち上がったときも、ユネスコは前者に対しては警告を、後者は危機遺産リストに登録して計画を変更させてきた。そしてドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」は、文化的景観を破壊する橋の建設を理由に世界遺産リストから抹消され、世界遺産が世界遺産でなくなった2件目の例となった。
世界遺産とはなんなのか?
世界遺産はどのようにしたら守られるのか?
ケルン大聖堂の景観問題を皮切りに、世界遺産活動はまた1歩、深いステージへと進みゆく。