世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ケルン大聖堂:世界最大のゴシック建築/ドイツ(3ページ目)

世界最大のゴシック建築であり、完成まで632年を要したドイツの世界遺産「ケルン大聖堂」。そのコンセプトは「天」。神の国へ一歩でも近づこうとひたすら高さを求め、神の化身であるところの光を求めて限りない明るさを追い続けたケルン大聖堂の見所とその歴史・観光情報を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

632年を経ての完成

ケルン大聖堂、ケルン中央駅、ホーエンツォレルン橋、ライン川

左がケルン大聖堂、中央がケルン中央駅、手前がホーエンツォレルン橋とライン川

大聖堂の規模はあまりに大きく、300年を経た16世紀半ばになっても完成には至らなかった。

16世紀といえば時代は宗教改革。1517年、ルターの九十五か条の論題に端を発した改革は、三十年戦争をはじめとするカトリックとプロテスタント両勢力による数々の戦争に発展。ドイツ国内は徹底的に破壊されて疲弊し、ケルン大聖堂の工事は中止され、以来200年以上もの間手つかずになってしまう。

時代は下って18~19世紀。イギリスでふたたびゴシック建築の価値を見直そうと、ゴシック・リバイバルの動きが現れる(ビッグ・ベンで有名な世界遺産・ウェストミンスター宮殿が代表例)。この動きがフランス、ドイツにまで広がっていくなかで、1814年にタイミングよく失われていたケルン大聖堂の設計図が発見される。
西ファサードを見上げる

西ファサードを見上げる。塔には508段の螺旋階段があり、約100mの地点まで上ることができる。景色もよく、オススメ!

ちょうどその頃、都市国家連合的な色が抜けないドイツは、ナポレオンに侵略された経験から「国」としての統一が叫ばれるようになっていた。こうした背景もあってケルン大聖堂はドイツのシンボルと考えられるようになり、ゴシックによる世界一の大聖堂の建築が鋭意再開されることになる。

1842年、ついに再建が開始。1871年にはプロイセン王ヴィルヘルム1世の皇帝戴冠によってドイツの地はドイツ帝国としてはじめて正式に統一される。そして建設開始から632年を経た1880年、ドイツ国民の期待を受けたケルン大聖堂は高さ157mの双塔を持つ人類史上最高の建造物として完成を迎え、ヴィルヘルム1世も参加して竣工の式典が執り行われた。 

ケルン大聖堂を外から眺めよう!

南東から見たケルン大聖堂

南東から見たケルン大聖堂。フライング・バットレスの向こうが内陣や後陣、下の青屋根の小部屋が放射状祭室になる

ケルン大聖堂の見所の第一は、なんといってもその外観の威容。とにかくでかい! しかも単に大きいだけでなく、細部の彫刻もきわめて精密で、大聖堂を上るとよくわかるのだけれど、人の目に触れないようなところにまで装飾がキッチリと施されている。

まずはゆっくりと周囲を回り、ゴシック建築を存分に味わっていただきたい。ゴシック建築としてはフランスの世界遺産「アミアン大聖堂」を模しているということで、典型的な形をとる。
バイエルン窓

バイエルン王ルードヴィッヒ1世が贈ったという5つのステンドグラスは「バイエルン窓」と呼ばれている。これは十字架から下ろされたキリストの像

全体は下部が長い十字架型=ラテン十字形のプランで、十字架の頭が東、下が西を向いている。カトリックの大聖堂の典型的な構成だ。

十字架の左右を袖廊(翼廊)、下部の長い部分を身廊(ネイヴ)と呼び、頭の部分を内陣(チャンセル)と呼ぶ。身廊、内陣の外側には側廊という通路が通っており、内陣の先には半円がついていて、これを後陣(アプス)という。側廊とつながる後陣周りの回廊は周歩廊、周歩廊の外の小さな部屋の並びは放射状祭室だ。
身廊を支えるフライング・バットレス

身廊を支えるフライング・バットレス

ゴシック建築を見て最初に驚くのが十字架状の建物から飛び出した肋骨のような骨組み、フライング・バットレス(跳び梁)だろう。身廊や内陣などから飛び出したフライング・バットレスは、一段低い側廊の壁に吸収されている。ロマネスク建築では身廊の重みを側廊の壁で支えたが、フライング・バットレスのような骨組みにすることで側廊を低くして、開いた部分に窓を造ってステンドグラスをはめ込み、光をより多く取り込めるようになった。

つまり、ステンドグラスがここまで発達したのもゴシック建築のおかげなのだ。 

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