世界遺産/中国の世界遺産

西逓・宏村/中国(4ページ目)

黄山の麓に広がる農村地帯、安徽南部の古村落。古来小桃源として中国の人々を魅了してきた西逓と、中国画の村として写生家を集める宏村では、明・清時代の暮らしがいまもつつましやかに伝えられている。今回は中国の世界遺産「安徽南部の古村落 - 西逓・宏村」!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

桃花源里人家 西逓の見所

西逓の青石牌坊

西逓と言えばこの青石牌坊。日本の中華街でも入り口には必ず門があるが、あれが牌坊だ

西逓・宏村それぞれの村の見所を簡単に紹介しておこう。

西逓の敬愛堂

西逓の祠堂、敬愛堂。「敬愛」には胡家の先祖や家族に対する思いが込められている

先の話のように、10世紀前後に川の西側にはじめて村ができた。このことから「西川」と呼ばれていたが、運搬局だった舗逓所が設置されたことから「西逓」になった。

西逓のランドマークは入り口の牌坊(パイファン:はいぼう)で、1578年、胡文光が朝廷に召されたことを記念して建てられた。胡家の向上心は非常に高く、科挙の試験で好成績を収めて役人になる者も多かった。それでも故郷を忘れず、先祖や家族への恩返しや孝行を何より重視したという。

徽派民家は220以上も残っており、一般に開放されているものもたくさんある。また、追慕堂、敬愛堂などの祠堂も当時のまま残されており、先祖を祀った数々の祠堂も見所のひとつとなっている。

 

中国画里郷村 宏村の見所

宏村の月塘

宏村のため池・月塘。「中国画の村」といわれるだけあって、ほとりでは数多くの学生が写生を行っている

宏村のハイライトは、なんといっても長さ約200m、幅約40mの人口池・南湖だ。家並みや風情ある木々、太鼓橋が湖面に映え、山々や青い空とあいまって、本当に水墨画のような景色を見せてくれる。

街並みは牛の形をかたどっているといわれており、雷崗と呼ばれる山が牛の頭で、村の入り口にある2本の木が牛の角、南湖が牛の腹で、入り組んだ水路が腸、そして月塘と呼ばれる池が胃袋にあたるのだという。どうやら現在の風水にあたる学問が、この配置を生んだらしい。

承志堂は「民間の故宮」と呼ばれており、徽商の繁栄をもっともよく表す建物といわれている。徽派三彫の精巧さが際立っている。

街をプラプラ歩いていると、いたるところにアトリエや書院があるのがわかる。学生たちはあちらこちらで写生をしているし、家の中もきれいに整備されている。

西逓・宏村の人々は、古来より美を愛し、和を愛し、故郷を愛し、先祖を愛し、家族を愛し、生きてきた。それがすぐれた建築を生み、彫刻を生み、書を生み、演劇を生み、料理を生み出した。その血を引く人々がいまも当時のままに暮らしている。
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