地震保険の鑑定方法はマニュアル化されている
地震保険の査定はマニュアル化している
Nさん そうですね。鑑定会社によって損害調査の結果が異なることのないように、損害調査の方法がマニュアル化されています。木造、鉄骨、さらに細分化された建物の構造ごとに異なるチェックシートを用いて鑑定するようなしくみになっています。
Hさん ただ、チェックシートに書き込めばいいという、簡単なものではないんですよ。地震被害の鑑定は、それなりに専門知識や経験が必要となるものなんです。そこで地震に関しては、一定の鑑定能力や経験のある鑑定人が手掛けることになっています。
清水 となると、限られた方しか損害調査ができないわけですよね。大きな地震があったら、調査人員が足りなくなったりしないんですか?
Hさん 大きい地震では足りなくなることがあります。阪神・淡路大震災の時もそうでした。そのため大きな地震が発生したときには、全国から鑑定人を集めるんです。
Nさん 事故発生と同時に保険会社による鑑定人の争奪戦が始まるんですよ。
清水 そうなんですか。
Nさん 阪神・淡路の時は私も現地に行きました。それでも圧倒的に鑑定人の数が足りなくて現場に応援要員を20人ぐらい紹介しましたね。
Hさん 実際には、保険会社の担当者と鑑定人がセットになって損害調査を行うケースが多かったですね。
Nさん そうですね。こうした損害調査のやり方は、地震被害だけではないんですよ。台風や水害などの広域災害は、すべて同じように行っています。
損害区分によって支払われるため、鑑定内容の不満は率直に伝えて
清水 一般的な保険は、損害を受けた金額がおおむね保険金として受け取れますが、地震保険では受けた損害が「全損」「半損」「一部損」の3区分(※)のどれにあたるかをあてはめて、3つのうちのいずれかの保険金が支払われますね。
※2010年のインタビュー当時は3区分でしたが、2017年1月1日以降に契約した地震保険では「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分になります。
Hさん そうです。地震保険と他の保険との最大の違いはそこでしょうね。損害割合に応じた保険金が支払われます。
Hさん 順を追ってお話ししましょう。地震被害の調査では、まずは建物の外観で確認するのが基本になっています。建物の外観を調査をして、それ以上特に何もないということであれば、それで調査結果が出てきます。
Nさん こうしたとき、私の場合はだいたい、お客さまの建物の周りを2周します。1周目はお客さまと一緒にぐるり。その時に被害状況を写真に収めるのですが、「私が気付かないところは教えてください」とお客さまにお願いしています。そのあと、さらに1周ぐるり。
清水 なるほど。お客さまと一緒に損害確認のための共同作業するわけですね。
Nさん そうです。ただ、建物の外観を見ただけでは分からない内部で気になるところがあれば、たとえば、建物の内部などにひびが入っているとか、これまでの認定の内容が変わるような内容については、こちらも再度確認させてもらっていますよ。
Hさん 家の隅から隅まで確認するのは難しいこともありますし、時には確認が漏れてしまう場合もあります。「この損害は確認してもらっていない」など、お客さま自身で気になるところがあって、鑑定の内容に納得がいかないということであれば、ぜひお客さまから伝えてくださると助かりますね。
清水 なるほど。「再鑑定」などと難しく考えずに、まずは漏れがあれば率直に伝えることが大事なんですね。よく分かりました。
損害区分に分けるのは、鑑定を早めて保険金の支払いを早めるため
建物内部に損害があれば伝えよう
※2010年のインタビュー当時は3区分でしたが、2017年1月1日以降に契約した地震保険では「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分になります。
Hさん ええ、そうです。調査結果は、ほぼその場で出すことができます。
清水 地震被害を受けて困り果てている時ですから、調査結果が速くわかって、さらに早く保険金が受け取れれば、お客さまは本当に助かりますよね。
Nさん 阪神・淡路の時も、私が担当したエリアでは、トータル1カ月ぐらいで損害調査をすべて終らせることができました。ただ、当時、地震被害のあった地区で、地震保険に入っている方自体がそもそも少なかったんです。また、阪神・淡路では、一部の地域で全焼した建物がとても多く、鑑定上でいえば全損が多かったのも、鑑定が迅速に進んだ理由でした。鑑定が難しい半損・一部損がそれほどなかったとも言えます。
清水 なるほど。災害の規模によるということかもしれないですね。ただ、大きな災害が起きても、お客さまにできるだけ速く保険金が支払われるような工夫がなされていることは、とてもよく分かりました。今回、火災保険の請求に関してなかなか聞けない貴重なお話をたくさんお聞きできて、とても参考になりました。ありがとうございました。
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