世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

キリマンジャロ国立公園/タンザニア(3ページ目)

赤道に輝く天然の氷河――最初は誰もその存在を信じなかった神秘の氷河であり、間もなく消滅すると言われる悲しい氷河。人生の節目に「素人でも登れる七大陸最高峰のひとつ」を訪れて、この奇跡を見てはいかが?

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

あと15年? 消えゆく氷河

ウフル・ピークから見た氷河

山頂ウフル・ピークから見た氷河。氷河の周りの地面が滑らかなのは、かつてそこにも氷河があった証拠 ©牧哲雄

マウェンジ峰

ゼブラ・ロック付近から見たマウェンジ峰 ©牧哲雄

赤道直下に輝くこの奇跡的な氷河。しかし、この氷河を見ることができるのも、あと15年ほどかもしれない。

ユネスコが2007年4月に発表した『気候変動と世界遺産のケース・スタディ(Case Studies on Climate Change and World Heritage)』には、地球温暖化によると思われる気候変動が脅かす26の世界遺産がリストアップされているのだが、この中にはキリマンジャロも含まれている。

 

マンダラ・ハット付近の樹林帯

マンダラ・ハット(約2,700m)付近の深い樹林帯 ©牧哲雄

それによると、10,000年以上持続したこの氷河は20世紀の100年間に80%も減少しており、このペースで進むとあと15年未満で完全に消滅するのだという。

地球温暖化の影響をもっとも受けやすいのが氷河であることから、氷河は地球環境のバロメーターといわれている。ところが場合によっては21世紀中に世界の氷河がすべて消滅することもありえるらしい。

この驚異的な氷河が消えてしまっていいものなのかどうか。ぜひ一度、自分の目でキリマンジャロの美をたしかめていただきたい。

 

キリマンジャロを登ろう!

ホロンボ・ハットから望むキボ峰

ホロンボ・ハット(約3,700m)付近から望むキボ峰。ハット(hut)とは山小屋のこと ©牧哲雄

世界でもほとんど例を見ないこの赤道から極地への旅。といっても「素人には無理だろうなー」と誰もが思うだろう。ところが、キリマンジャロはこんな風にいわれている。

「素人でも登れる七大陸最高峰のひとつ」
「富士山を登山できればキリマンジャロは征服できる」

マンダラ・ハット

マンダラ・ハット。こことホロンボ・ハットには太陽電池による電力と、ベッドやシャワーがついている ©牧哲雄

実際毎年2~3万人が訪れ、私の多くの友人たちもキリマンジャロを登っている。もちろんみんな素人だ。彼らの話を聞くに、頂上まで登り切れるかどうかは五分五分。当日の天気もあるし、高山病で途中リタイヤする人も少なくない。でも、半数以上は無事山頂にたどり着けるのだという。

ちなみにガイドは国立公園の途中までしか行っていません。熱帯熱マラリアを発症して体力が回復せず、医者に「頂上で再発したら間違いなく死ぬよ」といわれて断念した。キリマンジャロの氷河を目の前にしながら本当に残念。というわけで今回の記事、特に頂上付近は友人たちの話などを参考にしています。 
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