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この日、三越銀座店が売り場面積を大幅に増床し、リニューアルオープンしました。報道によると開店前には2000人もの行列ができたそうで、根強い三越ファンの存在、そして話題性の高さがこの数字からもうかがえます。
いきなり物騒な書き出しで驚いた人もいたかもしれませんが、名実ともに東京を代表する商業地としてゆるぎない地位を保ち続けてきた街「銀座」が、失いつつある“かつての銀座”を取り戻そうと、この日、ようやく重い腰を上げたのです。まさに原点回帰への第一歩が「9月11日」となりました。一体どういうことなのか、順番にご説明していくことにします。
「銀座らしさ」とは何なのか? 新勢力の台頭に揺れ動く銀座デパート
これまで銀座といえば「上質」「洗練」といったイメージが強く、一見(いちげん)さんお断り的な敷居の高さがかえって「あこがれ感」につながり、他を寄せ付けない唯一無二の商圏を生み出してきました。こうしたイメージは日本国内にとどまらず世界的にも浸透しており、ここ10年、名だたる高級ブランド店が相次いで銀座に進出してきました。ところが今日、「ラグジュアリー・ブランド」から「ファスト・ファッション」へと主役交代が鮮明さを増したことで、かつての高級路線を軌道修正せざるを得ない状況に直面しています。ユニクロを筆頭に、ZARA・H&M・フォーエバー21といったカジュアル専門店の一大勢力が台頭したことで、来場客の若年化や低価格志向に弾みがつくこととなりました。
こうした流れは顧客層の幅を広め、集客力の向上には貢献する一方で、銀座の持つ「老舗」「一流」といったイメージを弱体化させかねない懸念を抱かせました。晴海通り沿いのみずほ銀行跡地(銀座4丁目)に世界最大級の旗艦店を出店予定していたルイ・ヴィトンが計画を中止し、代わりにカジュアル衣料店の代表格であるGAPが進出を決めたというニュースは実に衝撃的でした。振り返れば今年4月、銀座松坂屋がフォーエバー21を誘致し、店内1階~5階部分の一部を使って大型店舗をオープンさせたばかりです。
どちらも銀座のファスト・ファッション化(主役交代)を裏付ける象徴的な出来事といえるでしょう。百貨店同士の争いというよりは、むしろ「高級百貨店」VS「カジュアル専門店」といった対立の構図が鮮明になってきました。
そこで、低価格化・大衆化に歯止めをかけ、“かつての銀座”を取り戻そうと一念発起したのが冒頭で触れた銀座三越でした。開業80年の老舗百貨店としての存在感を高めようと、「銀座らしさ」「銀座三越ならでは」といった銀座スタイルへの原点回帰に着手し始めました。こうした三越の経営戦略が銀座にどれだけの影響を及ぼすか、百貨店不況が続く中(下図参照)、見通しは視界不良ですが、その努力は評価したいと思っています。「ラグジュアリー」と「カジュアル」が融合した“新しい銀座”が誕生することを、個人的には期待しています。
さて、このように時代の変化はあるものの、常に流行をリードする商業地「銀座」――。半面、「住宅地」としての銀座にはどのような魅力があるのでしょうか。毎日が“銀ぶら”という生活にあこがれるのは、私ガイドだけではないはずです。そこで、銀座エリアの分譲マンション事情について、次ページで詳しく見ていくことにしましょう。