セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

エイズにも負けない愛~『RENT』(2ページ目)

現在上演中のミュージカル『RENT』。音楽やダンスが素晴らしいのはもちろんですが、世界中を涙させてきたゲイカップルの愛の物語をフィーチャーして、この舞台の魅力をお伝えしたいと思います。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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コリンズとエンジェルの愛

主人公マークの親友である哲学者、トム・コリンズ。イーストビレッジに来ていると電話をかけた後、強盗に襲われ、道端で倒れてしまいます。そこに偶然通りかかったストリート・ドラマーのエンジェルは、傷の手当てをし、コリンズを助けるのです。そして2人は、おたがいにゲイでHIV陽性者であることを知り、一気にその仲を深めていきます。

コリンズは体格のいい、包容力のあるタイプ。エンジェルは、可憐な乙女タイプです。コリンズはその男らしさでエンジェルを頼もしく守り、エンジェルはその優しさでコリンズを癒していきます。
男×男の組み合わせに慣れているゲイにとっては「日常的に女装してる人とつきあうなんて…」という違和感があるかもしれませんが、内面的にはこういう組み合わせが理想!と感じる方は多いハズ(ウチもわりとそうです)

RENT

ブロードウェイ版のエンジェル&コリンズ

さて、そうしてつきあいはじめたコリンズとエンジェルは、いっしょにHIV陽性者支援ミーティングに出かけたり、懸命に生きようと努力します。もしそれぞれが独りだったとしたら、迫り来る死を前に、自暴自棄になっていたかもしれません。でも、愛が生まれたことで、2人は前向きに生きる意味を得られたのです。ミュージカル的にはそれほど目立つ場面ではありませんが、本当に大切なエピソードだと思います。

しかし、幸せに暮らしていた2人の前には、苛酷な現実が待ち構えています…
多くの方はすでに『RENT』のストーリーをご存じでしょうし、随所で明かされているので書いてしまいますが、努力の甲斐もむなしく、エンジェルはクリスマスを前に天に召されてしまうのです…
このシーンは『RENT』の中でも最もせつなく、涙を誘うシーンであり、ひときわ美しく、崇高に描かれています。間違いなく、この舞台のクライマックスです。
(世界中で熱狂的に支持されているミュージカルの白眉とも言うべきシーンをゲイのカップルが担っているのです。なんて素敵なことでしょう!)

亡くなっても、エンジェルはみんなの心の中に生き続けます。
エンジェルとは、その名の通り、無償の愛を象徴する、天使のような存在です。
『RENT』には様々なキャラクターが登場しますが、観客はエンジェルの生き様にこそ、希望を見出し、感動し、勇気づけられるのです。

エンジェルの肉体は病気には負けてしまったかもしれないけど、その愛は決して負けなかった…どんなに絶望的な状況(※)であっても、誰かを全身全霊で愛することで生きる意味を見出し、人は強くなれるのだということを、コリンズとエンジェルは教えてくれます。そんな、本当に尊く、かけがえのないメッセージを、この2人ほど圧倒的なリアリティで伝えてくれる作品はほかにないのでは?と思います。

※エイズとは当時まだ、死の病でした。HIVに感染すると死を覚悟しなければいけない、そういう時代がかつてあったのです(今でも、発見が遅れ、亡くなってしまう人は、ゼロではありません。が、検査を受けて早くわかれば、ずっと元気に生きていけるようになりました)

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