企業のIT活用/IT経営の基礎知識

オフショア開発(海外委託)の4つの注意点

オフショア開発先として中国が増えていますが国が変われば仕事の進め方も意識も違います。中国のパートナー企業に出す場合、日本側は開発工程の違いやそれぞれの意識の違いを熟知して管理しなければなりません。注意点をみていきましょう。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

1.優秀なブリッジSEの確保がまず第一

ITベンダーは昔から多彩な人材が働く場

ITベンダーは昔から多彩な人材が働く場

オフショア開発を成功させるには優秀なブリッジSEの確保がまず第一。ITベンダーは昔から多彩な人材が働く場で、隣の同僚が外国人ということも珍しくありません。ITベンダーはある程度グローバル化しているのに、システム開発を依頼するユーザー企業がグローバル化していません。特に大手企業の管理部門は親方日の丸意識が強く、ITベンダーとの関係は下請け構造になっています。

→ 違反は公表!システム開発が下請法の対象

大手企業は特定のITベンダーと長年のつきあいがあり、もちつもたれつの関係。時々、官公庁のシステム入札でゼロ円入札が話題になります。ITベンダーにとってはシステム開発費がゼロ円でも運用管理で元がとれるからです。反面、ITベンダーは発注者である大手企業の業務知識が求められます。つまり、仕様書に書いていないことを阿吽の呼吸で把握しなければなりません。ひどい場合はメモ書きのような仕様書だけでプロジェクトがスタートすることがあります。

さすがにオフショア開発する案件では仕様書としての体裁は整えますが、仕様書の漏れやあいまいなところは当然あります。確認しながら仕様書に落とし込みできるブリッジSEが重要な役割をはたすのに、なかなか人材がいません。特に優秀なブリッジSEは引き抜きなどが日常茶飯事。いかに優秀なブリッジSEを確保するかが鍵になります。

2.優秀なブリッジSEをどう探すか

中国、日本双方の商習慣を熟知しなければならない

ブリッジSEは、日本と発注先の国の商習慣を熟知しなければならない

ブリッジSEは日本と発注先の国の商習慣を熟知していなければなりません。語学力はもちろんですが、特に重要なのがコミュニケーション能力。細かいところに気づき、すりあわせや調整能力が要求されます。オフショア先への指示や管理が行えるプロジェクトマネージャーとしての能力も必要。技術的にはそれほど秀でている必要はなく、それよりもプロジェクトの勘所をおさえる力が重要です。

求人を出しても優秀なブリッジSEの採用は難しいため、気長に育てることも必要。例えば中国へオフショアする場合、日本の大手企業で数年間働いた経験のある中国からの留学生を採用し、ITスキルの教育とプロジェクト経験を積ませてブリッジSEを育てているITベンダーがあります。日本語とITスキルを教育している中国の大学と提携し優秀な学生を選抜、日本でプロジェクト経験を積ませてブリッジSEにしているITベンダーもあります。

反対に日本人SEが中国語を覚え、中国のITベンダーの仕事の進め方を学びブリッジSEになるケースもあります。中国の大学へ留学し、現地企業に勤務した経験のある日本人を採用しブリッジSE教育することもあります。

いずれにしてもシステム開発に銀の弾丸(魔法のようにすぐに役立つ特効薬)がないのと同じように、全てを解決してくれる魔法のブリッジSEは存在しません。ブリッジSEをきちんとフォローする仕組みを発注元は作っておかなければならないのです。
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