地価や賃金は下がるのに、どうして管理費は下がらないのか?
その理由について、国交省は「住宅地においては、都市部で利便性・選好性(人気)が高く潜在的に需要の大きい地域で、価格の値頃感の高まりや税制といった住宅関連施策の効果から住宅地の需要が喚起されたため」と説明しています。
しかし、その一方で前年と比較可能な2万1786地点のうち、今年上昇したのはわずか27地点だけで、住宅地に関しては19年連続で前年割れとなりました。地方圏においてもほとんど改善は見られず、とても今後、地価上昇が期待できるような市況にないことが改めて浮き彫りになりました。まさに“資産デフレ”が日本社会を萎縮させているのです。
下がっているのは地価だけではありません。賃金も同様です。下の折れ線グラフをご覧ください。厚生労働省が公表している実質賃金指数をグラフ化してみました。実質賃金指数とは、物価変動を考慮して指数化した賃金水準のことです。見てお分かりのように、一目瞭然、ほぼ右肩下がりの軌跡を描いています。もちろん、給料は増えているという人もいるでしょうが、総じて賃金は下落し続けています。
そのせいか、住宅ローンの返済に窮している人が後を絶たず、09年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」に基づく返済猶予の申込者が今年6月末時点で6万2872人(金融庁調べ)に達しました。由々しき事態といわざるを得ません。景気回復が遅れれば、さらに申込者が増えることは想像に難しくないでしょう。
ところが、こうしたデフレ圧力により地価も賃金も下落している中で、分譲マンションの平均管理費は首都圏全域で上がり続けていることが分かりました。モノの値段が下がれば、管理費も下がっていいような気がするのですが、現実はどうも、そう単純ではなさそうです。
一体、なぜ管理費は下がらないのか?―― 次ページで詳しく見ていくことにしましょう。