対人恐怖症の本質:過剰な不安と恐怖感
対人恐怖症の本質は、その場の状況にふさわしくない、過剰な不安と恐怖感にあります。私達には動物としての本能があり、危険な状況に直面すると、体内にアドレナリンが分泌され、全身が緊張状態になり、危険に備えますが、対人恐怖症では、人と会うといった、特に危険でない状況でも、危険に備える反応が起きてしまうのです。過剰な不安反応はさまざまな状況で起こります。飛行機やエレベーターのような狭い場所に恐怖を感じたり、また、特にこれといった状況でなくても、不安感に襲われることがあります。
人と会う時に不安症状が生じることは、欧米では少ないので、対人恐怖症は日本独特の病気のように考えられていましたが、その実態は不安障害です。実は、欧米でも、人前でスピーチや、何かパフォーマンスをするといった状況で強い不安感を感じる人は少なくなく、近年、社会不安障害として、注目されてきています。対人恐怖症は社会不安障害の一種であるとみなすこともできます。
対人恐怖症の治療法としては、心理療法の一種である認知行動療法と薬物療法が代表的です。薬物療法では、脳内の神経伝達物質の内、特に、セロトニンのバランスを調整します。薬物療法が対人恐怖症に有効である事は、その病気の発症には、脳内の神経伝達物質が関与していることを示唆しています。認知行動療法では、他人からネガティブに思われているといった認知の歪みを直し、同時に、緊張や不安を覚える場面に実際に身を置いて、対人恐怖を克服していきます。
10代の頃は内気で、異性から話しかけられただけで、顔が赤くなってしまったのに、大人になると、平気でオヤジギャグを飛ばしてしまうようになった人はいませんか? これにも経験を重ねるうちに慣れてしまうという、認知行動療法の原理が働いています。でも、ギャグを言う時には相手がどう思うか、注意した方が良いですよね。
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