漢方・漢方薬/イライラ・精神不安・うつ状態の漢方

加味逍遥散(かみしょうようさん)の効果・効能

「加味逍遥散」(かみしょうようさん)は、イライラ、便秘、肩こり、冷えのぼせ、頭痛、食欲不振、更年期障害、自律神経失調症、不妊症、子宮筋腫などに用いられる漢方です。効果・効能、飲み方、注意点、副作用等について解説します。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

加味逍遥散とは…どんな人・症状にいいの?

ストレスで症状が出やすいのもポイント

ストレスで症状が出やすいのもポイント

加味逍遥散(かみしょうようさん)は、疲れやすく、イライラするなどの不定愁訴があったり、気分の変動が多いタイプや、几帳面なタイプに。脇(や胸)が張って痛い、頭痛、肩こり、便秘、食欲不振、夜間の発熱、口の渇き、目の赤み、冷えのぼせなどの症状に。


「加味逍遥散」の効果

生理不順や生理痛、更年期障害、頭痛、肩こり、冷え・のぼせ、虚弱体質、便秘、自律神経失調症、不妊症、子宮筋腫などに。なお、肝炎などの肝臓の治療以外に胆石症、胃と十二指腸潰瘍、慢性胃炎などに用いられる場合もあります。


「加味逍遥散」に入っているもの

画像提供:漢方のイスクラ薬局日本橋店。加味逍遥散は、気の巡りが悪い状態=気滞による、冷え・月経不順・PMS・更年期障害などに多く使用。様々なストレス性疾患にも(店主談)

画像提供:漢方のイスクラ薬局日本橋店。加味逍遥散は、気の巡りが悪い状態=気滞による、冷え・月経不順・PMS・更年期障害などに多く使用。様々なストレス性疾患にも(店主談)

柴胡(セリ科の根)、当帰(セリ科の根)、芍薬(シャクヤクの根)、茯苓(サルノコシカケ科のマツホドの菌核)、白朮(オケラなどの根茎)、薄荷(ハッカの葉)、生姜(ショウガの根茎)、牡丹皮(ボタンの根皮)、山梔子(アカネ科の果実=クチナシの実)、甘草(マメ科などの根やストロン)


「加味逍遥散」が合わない人

のぼせなどの熱症状がなければ、山梔子と牡丹皮を抜いた逍遥散に。




「加味逍遥散」の飲み方などの注意点

■ 飲む時間
一般的には食事と食事の間の空腹時、食事をする1時間前など、お腹が空で胃に吸収されやすい時期に飲みます。胃腸が荒れやすい人には食後、排便をうながすタイプの漢方には、空腹時の服用を勧める場合もあります。なお、食間に飲み忘れたときは、食後でいいので飲みましょう。

■ 「水」or「白湯」?
症状によって、冷たい水で飲むほうが効果的な場合(その反対も)もありますが、基本的には生薬を水で煎じた「煎じクスリ」の場合は、人肌に冷まして飲みます。生薬の有効成分を抽出して乾燥・加工した「エキス剤」の場合、お湯に溶かしたり、水と一緒に飲んでください。

「加味逍遥散」の副作用

体質や症状に合わない、西洋薬との併用、アレルギー体質などの場合、不快な症状が出ることがあります。ちょっとおかしいな、と思ったらすぐ服用をやめ、漢方の専門家や処方してくれた医師に相談しましょう。


「加味逍遥散」が買える場所

漢方薬局や病院、診療所、ドラッグストアなどです。

代表的な商品名:(アイウエオ順)
  • 一元 加味逍遥散 (一元製薬)
  • 加味逍遥散エキス[細粒] (松浦漢方)
  • 加味逍遥散料エキス錠クラシエ (クラシエ薬品)  
  • カミセーヌ「コタロー」 (小太郎漢方製薬)
  • ツムラ加味逍遙散エキス顆粒 (医療用)(ツムラ)

「加味逍遥散」の漢方的メカニズム<中級者向けトリビア>

肝(臓)に栄養を与える血液の不足やストレスなどで肝の機能が低下すると、気や血のめぐりが滞って、イライラしたり怒りっぽいなどの症状がでます(=肝鬱血虚+化火)。これを解消させる生薬が配合されています。

■具体的な生薬の効能
主薬の柴胡がオーバーヒートした肝の働きをスムーズにし、うつうつとした症状を解消し、薄荷がその働きを助けます。当帰、芍薬で血液を補いながら血行促進し、茯苓、白朮、甘草で胃腸の機能を高めて気や血の原料の質を高めます。生姜も胃腸の働きを助けます。

これに、消炎作用や止血作用のある山梔子と、熱を冷まし、血液浄化作用のある牡丹皮が加わることで、のぼせなどの熱症状を緩和し、余計な水分も排出させるしくみです。

「加味逍遥散」のおまけのエピソード

「逍遥」とは、ぶらぶらと気ままに歩くとか、散歩という意味。つまり、気持ちを穏やかにし、不安な材料を解きほぐしてくれる散剤であるという意味あいが含まれています。そういえば、逍遥という名を用いた明治時代の小説家、坪内逍遥という人もいましたね。

漢方の方剤名は、処方した漢方医などが命名し医学書などに伝統的に用いられているものが一般的ですが、加味逍遥散のように、作用からつけられたものも少なくありません。わたしたち日本人は漢字を用いるので、興味深い分野ではないでしょうか。
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