今回は漢方で考えるかぜのタイプと、代表的なお薬をご紹介しましょう!
かぜを侮ってはいけないワケ……「風邪」の本当の意味
かぜは正気と邪気との闘い。もともと正気が足りなければ、虚弱を補い、病気に立ち向かう力をつけるのが漢方のキホン
なお漢方ではかぜによって起こる鼻水やくしゃみ、のどの痛みや発熱などを 「感冒」や「傷風」とよび、一時的に広く流行し、伝染性の高いものを「時行感冒」と区別したりします。まさにインフルエンザなどがそうですね。
またかぜには季節性があり、冬はぞくぞくと寒気が強い風寒タイプ、春は高熱やネバネバした痰をともなう風熱タイプなど、季節によって起こりやすいタイプが異なります。
これから冬を迎える時期には、風+寒で風寒タイプのかぜが多くなりますが、実は地球温暖化などの影響か、最近では冬でも風熱タイプのかぜを引き起こすことが多くなってきているようです。
かぜのタイプを季節と症状で分ける
漢方でのかぜの治療法としては、発汗させて悪いエネルギーである邪気を追い払うことが第一です。これに季節や、進行の度合い、虚弱体質なら体力や気力を補うなどの体質を加味しながら処方を選びます。■ 冬に多い、風+寒のかぜタイプ
熱や汗よりぞくぞくっとする寒気のほうがひどく、手足のだるさや鼻水がダラダラ出るのが大きな特徴。カラダが冷えると、全身をめぐる気血の通路である経絡の流れも悪くなるので、頭や関節に痛みを生じることも。
代表薬として荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)が挙げられますが、発汗力を高めたり、喘息気味の場合は麻黄湯(まおうとう)などもおすすめです。ちなみに葛根湯は日本で有名な処方ですが、背中や首筋の強ばりがあったりするときに有効で、本場の中国ではメジャーではありません。
■ 春に多い、風+熱のかぜタイプ
悪寒より発熱のほうがひどく、のどの乾燥や扁桃腺が赤く腫れて痛いなど、炎症性が高いのが特徴。口が渇き、鼻が詰まったり、粘っこい痰が絡むこともあります。
このような症状には銀ぎょう散がよく合います。解熱作用や抗炎症作用が高いので、インフルエンザ対策にも用いられ、最近では銀ぎょう散ベースの市販薬も多く出回っています。
■ 夏に多い、暑+湿のかぜタイプ
夏は気温が高くなるだけでなく、湿気も多くなります。体内にも余計な湿と熱がたまりやすいのですが、このようなタイプのかぜは全身がだるい、頭が重い、口がネバネバする、吐き気がするなどの症状が多く見られます。
新加香じゅ飲(しんかこうじゅいん)が代表的ですが、下痢や暑気あたりがある場合はかっ香正気散も使用できます。
体質別ならこんな漢方薬も
どんな症状でも体質や体調に応じて処方を変えるのが漢方。かぜでも同じことがいえますが、先ほどのような季節に関係なく、しょっちゅうかぜを引いたり、なかなか治らない……なんて人もいるようです。こんな場合は参蘇飲(じんそいん)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などで気力を高め、邪気を追い払うパワーを補充することが必要でしょう。
いつも手足が冷たく、冷え症ならば、カラダを温めて寒さを散らし、発汗する作用の高い、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が適しています。
もちろん漢方を試したい場合は、漢方の専門家に相談くださいね。