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退職後に不眠症?リタイヤ世代の睡眠障害の傾向と対策

定年になったら、思いっきり自分の好きなことをしたい! そんな夢の実現には、健康であることが基本条件。リタイア前後の団塊世代の方が陥りやすい睡眠障害と、セカンドライフを満喫するための上手な睡眠のとり方をご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

年をとると短時間睡眠になる? 眠りと年齢の関係

走り続けた若いころとは、心身の疲労度が違います

走り続けた若いころとは、心身の疲労度が違います

平成18年の社会生活基本調査によると、睡眠時間がもっとも短い年齢層は男女ともに45~49歳で、男性が7時間19分、女性が6時間51分でした。この年齢層と比べて、65~69歳では男性が47分、女性で49分も長くなっています。

働き盛りの40代後半の人は、睡眠時間を削って仕事や家庭サービスに努め、退職後は悠々自適でグッスリ眠っている、ように見えますが実はちょっと違います。

人は年を経るに従って、心身ともに老化します。脳の中にある「眠らせる脳」も衰えて、働きが悪くなってきます。高齢者になると、寝つくまでに時間がかかり、夜中に目を覚ます回数が増えます。そのため、寝床の中には長い時間いますが、本当に眠っている時間の割合が減ってきます。また、睡眠の深さも変化し、浅い睡眠が増えて深い睡眠やレム睡眠が減ります。

仕事を辞めて日中の活動量が減ることも、睡眠に影響します。睡眠の目的の1つは、心身の疲労を回復すること。毎日、趣味などいろいろな活動をしているといっても、仕事をしていた現役時代に比べたら、心身の疲労度は軽いものです。この点から見て、高齢者の睡眠時間が短くなるのは自然なのです。

ですから、退職後に朝早く目覚めたり、夜中に何回か目覚めたりしても、あまり気にしないほうがよいかもしれません。ただし、睡眠障害が時間とともにひどくなったり、眠れないことが原因で日中の活動に悪影響が及ぶなら、睡眠障害の専門医にご相談ください。


退職後は眠る時間帯がずれやすい?

地球の時間と体内時計がずれると、睡眠障害が起こります

地球の時間と体内時計がずれると、睡眠障害が起こります

毎日会社へ行っていたときは、会社の始業時刻に合わせて、規則正しい生活を送ってきたはずです。ところがリタイアすると、自分の好きな時間にしたいことができるようになります。現役時代にあこがれていた朝寝坊や昼寝は、やりたい放題です。

とはいえ、何事にも限度があります。夜更かしの朝寝坊で朝日を浴びない生活が続くと、体内時計が地球の時間に合わなくなり、「睡眠相後退症候群」になってしまうことがあります。この病気は、睡眠の時間帯が遅いほうにずれてしまう睡眠障害の一種です。

睡眠相後退症候群にならないためには、ある程度、規則正しい生活をして、午前10時までに太陽の光を浴びることが大切です。朝の強い光は体内時計を調整して、体を地球の昼夜のリズムに合わせてくれます。また、午後遅くに昼寝をすると、夜に寝つきが悪くなります。昼寝するなら午後3時までで、30分以内にしておきましょう。

夕ご飯を食べたら、何もすることがないからと布団に入ってしまう人がいます。定年まで仕事一筋に生きてきて、あまり趣味を持たない人に多いようです。朝までぐっすり眠れれば良いのですが、夜中に目が覚めて朝まで布団の中でまんじりともせず過ごすようなら、「睡眠相前進症候群」の可能性があります。

この病気は睡眠相後退症候群の逆で、睡眠の時間帯が早いほうにずれてしまっている状態です。中高年の1%が睡眠相前進症候群にかかっていて、年齢が進むと頻度が増えると言われています。治療として、いつもの就寝時刻の少し前に強めの光を浴びたり、早朝の光を避けるためカーテンやサングラスを使うことなどが勧められています。


退職後に必要な「毎日を楽しむ工夫」

1人で悩まず、誰かに相談してみては?

1人で悩まず、誰かに相談してみては?

定年を迎えるころには、いろいろなイベントを経験します。仕事を辞めることはもちろん、子どもの独立や自分自身の病気、親しい人との死別、熟年離婚など、ライフスタイルの大きな変化が起こります。こうした変化は、嬉しいことでも悲しいことでも、精神的なストレスとなります。

ストレスを解消する手立てを持っていないと、次第にストレスが溜まってきます。会社に行けば気が紛れたり、人に相談する機会もありますが、リタイアした後はそんなことも減ってしまいます。また、時間がたくさんあるだけに、悪い方向へ考えてしまいがちです。

精神的なストレスが続くと、うつ病になる確率が高まります。疫学調査によると、うつ病の有病率が最も高いのは50歳代ですが、次いで70歳以上の高齢者が多くわずらっています。さらに、60歳以上の高齢者の15%は抑うつ状態にあり、5%がうつ病と診断されています。また、うつ病の主な症状の一つが睡眠障害であり、逆に不眠が続くとうつ病になりやすくなります。

不眠だけではうつ病と言えませんが、それに加えて気分の落ち込みが続いたり、これまで楽しかったことが楽しめなくなったり、ものごとに興味がもてなくなったりしたら要注意。うつ病になると精神面だけでなく、食欲がなくなったり、体重が減ってきたり、疲れが取れない感じが長引くこともあります。

このような症状があったら、早めに精神科を受診しましょう。高齢者のうつ病では、自殺率が高いことも大きな問題。家族の方も気になる症状があれば、受診を勧めてあげてください。

【関連サイト】
睡眠のメカニズムとリズム
休み明けに多い「睡眠相後退症候群」とは?
政府も本腰! 自殺を予防するための睡眠キャンペーン

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