○×思考じゃなくて、△の領域をつくることができたのは、あやさんの場合にはなにか大きなきっかけが影響したのでしょうか?

アルバイト先で、自分ではできて当たり前だと思ってしていたことを褒められたり、何でも話せる友達や今の主人と出会えたことかな。いろんな人たちと知り合い、自分では気づかなかった意外な側面を評価してもらったりするなかで、少しずつ自分らしさを認めていけるようになれたんだと思います。

摂食障害になると、食べることでしかストレスを回避できない自分に対する嫌悪感や、そこから抜けられないことに対する罪悪感でいっぱいになってしまいます。でもそういう問題行動以外の、つまり「できないこと」にではなく、今の自分でも「できること、できていること」の方に意識を向けていく勇気を持つと気持ちがすごく前向きに変わっていきます。

人にはそれぞれ意外なところに、自分らしいよさがあるので、今の自分がしたいと思うことやできることを今していけば、その延長で必ずいろんな自分らしさを見つけることができるし、悪循環も良い循環へと変化してゆきます。この過程が摂食障害の克服の過程にもつながっていくのだと思います。


精神的なバランスを得ることが大切だということですね。

そうです。摂食障害は、生活習慣病と言っても過言ではありません。ですから体重・体型や食べ物にこだわり過ぎて、乱れてしまった食生活や生活リズムを、今度は意識して戻していく必要があるのです。とはいえ、急に生活リズムを変えるのは大変です。焦らず時間をかけて、今の自分にできることを1つずつ変えていくことが、結果的には一番の近道となります。

例えば前日の夜に過食してしまったとしても、翌朝はいつも通りの時間にちゃんと起きるとか、朝ご飯はいつも通りに食べるようにするとか。朝ごはんは無理でも学校だけは行く、バイトだけは行くとか。人によって何ができるかが異なるので、とにかく今の自分でできそうなことから1つずつ行動に移していく勇気を持ってほしいと思います。

自分的にはまだまだ納得できない生活だとしても、生活リズムを取り戻していくことで確実に体重と心が安定してきます。すると過食する必要性も徐々に減っていきます。また、たまに過食をしてしまっても、あまり自分を責めないことも大切です。

「たまに食べ過ぎることもあるけど、そういうことは誰にでもあることだよね」「久しぶりのご褒美だよね」という風に、○×思考ではなくて、△思考で考えることができるようになると、自分を責めることもなくなります。またこのように自己弁護が上手になれば立ち直りも早くなり、過食や拒食が生活の障害にもなりにくくなっていきます。

治療に頼って、「医者が何とかしてくれる」と思う人も多いのですが、結局は自分の気持ちの持ち方の問題なので、自分で自分らしさを見出せないと、根本的な克服にはならないと思います。それに必要なのは、「今の自分から、やりたいことをやってみよう」という勇気だけだと思います。


 

あやさんが自分が「たまに過食をするけど、摂食障害を克服できたかな」と気づいたのは、24歳の頃。そして、「私以上に、完全に摂食障害を克服した人に会いたい」と思い、色々な自助サークルに参加したといいます。しかし、逆にそこではあやさんが「どうしたら治るの?」とたずねられる立場。そのとき摂食障害の克服体験を語れる人の少なさにはじめて気がつき、語れる人間の必要性を強く感じたといいます。

こうして、あやさんは自分の体験をもとに、摂食障害に悩む人をサポートするカウンセリング活動をはじめました。最初の頃は気負いすぎて、納得のいくカウンセリングができないこともあったそうですが、そうした自分の迷いをホームページで正直に打ち明けることで患者との距離を縮め、しだいにリピーターが増えていったのだといいます。

「摂食障害を克服するには、自分らしさを見つけられることが必要」だとあやさんは繰り返しいいます。自分では気づかないその人の“自分らしさ”を見つける手助けをするために、あやさんはカウンセリングや講演活動を通じて、今後も多くの摂食障害患者のサポートを続けていかれるそうです。

あやさんのホームページはこちら
あや相談室 http://www.ayasroom.com/

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項