お父さんもキッチンに立ちやすいように、褒めて育てる

 私たちの父たちの世代は、「男性が台所にたつべきではない」という教育を受けてきましたが、男性、しかも定年退職後のやや高齢の方が対象の実験の場合、参加された方に拒否反応はありませんでしたか?

男性の料理
定年退職後の中高年男性を対象に実験では、基礎的な料理技術の習得のため料理教室が行われました。
山下 こうした実験に参加しようという意志のある方ばかりなので、基本的に前向きですし、定年退職後間もない方が多い世代で、昭和一桁世代よりは柔軟性がある方たちが多かったですね。

 参加者のモチベーションを維持するために、何か特に気を遣われた点等はありますか?

山下 そうですね。やはり今まで仕事中心の生活をしてこられましたので、まず実験に際して料理教室を開催し、基礎的な料理技術を習得していただきました。料理を指導したのは大阪ガスクッキングスクールの料理講師ですが、その期間のうち当初1か月は、できるだけ褒める、励ますということに気を遣いましたね。

エプロンをつけることも、包丁を握る事も初めてなのですから、初めはとまどいわからなくて当たり前です。「うまくできましたね」と励ますことで、だんだん自信がついてこられるのです。

そして1カ月ほどして自分でも料理ができるんだと自信がついてくると「今度はこうするともっとキレイに見えますね」とアドバイスしても、「なるほど、じゃあやってみよう」と好奇心も湧いて前向きに受け止めてくださいます。

南 なるほど、褒めて育てるですね。確かに不慣れなご主人が料理をし、家族が「おいしくない」と一刀両断にけなしてしまうと、「二度と料理はしない」ということになってしまいがちですものね。よくご主人が家事に協力的ではないとなげく主婦の方がおられますが、これは参考になりますね。

山下 はい、2カ月でご主人は変わりますよ。(笑)

「調理」のムーブメントを広げていく

山下 満智子
この成果をきっかけに、現代的に情報発信し、「自分で調理すること」をムーブメントにしたいと語る山下さん。
 私も働く主婦ですので、本当に忙しい時は調理するのがしんどい時があります。食の外部化が進む中で「自分で作る」というモチベーションを維持するためには、どうしたらよいのでしょうか。

山下 そこが今回の研究に携わった私のたちの役目だと思うのです。

こうした日常的な営みで健康を維持できるのです。よい事づくしで悪い事は何もありません。子どもは、勉強も大切ですが、同じように調理することでも脳を活性化できる、また高齢者は老化予防に役立つわけです。

一人で全部しなくて、お父さんがご飯を炊いて、お母さんがお味噌汁を作る、というように分担すれば作業は楽ですし、一緒にキッチンにたつことでコミュニケーションの場にもなります。また孫のために、お友達のために、というように誰かのために作るというのは、モチベーションを高めるには有効ですよね。

今回の研究の成果をきっかけに、「自分で調理する」ことを、ムーブメントとして広めていけるように、現代人にうまく訴求できるような情報発信を工夫していきたいと思います。

南 たとえよいことでも、心から受けいれられなければ長続きしませんものね。現代は、食に関心がない人たちと、とても意識が高い人と2極化してきているように思います。この結果を知って、例えば子どもさんの教育に関心がある人、あるいは健康に関心がある人にも、調理することのよさを知ってもらい、実践することでその楽しさがどんどん伝わっていくとよいですね。
今日は、お忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。
 
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