
皆さんは最近、急須(きゅうす)でお茶を淹れていますか?
コンビニやスーパーマーケットで、手軽にペットボトルのお茶が買える時代です。わざわざ急須でお茶を淹れる人は少なくなっているかもしれません。
しかし、その「便利さ」と引き換えに、私たちの脳にとって大切なものを失っているかもしれません。「急須で淹れるお茶」は、コスパがよいだけでなく、私たちの脳や体を若々しく保ってくれる働きがあるようです。最新の研究から分かっていることをご紹介します。
緑茶習慣で認知症リスク低減? 大規模研究で分かった脳の健康状態との関連
まずご紹介したいのが、日本の高齢者を対象に行われた非常に大規模な研究結果です。
2025年に発表された論文によると、緑茶を飲む習慣がある人ほど、脳の健康状態がよいことが科学的に示されました。
この研究は、日本各地の8766人を対象にした「JPSC-AD(健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究)」の一環として行われたものです。
注目されたのは、MRI検査で確認される「大脳白質病変」です。これは簡単に言うと、脳の血管の老化によって現れる小さな傷やシミのようなもので、血管性認知症やアルツハイマー病の独立したリスク因子と考えられています。
調査の結果、以下のことが明らかになりました。
- 緑茶の摂取量が多いほど、大脳白質病変の容積が有意に小さい
- 1日3杯(約600ml)以上飲む人は、1杯未満の人に比べて病変の割合が明らかに低い
- 一方、コーヒーを飲む習慣の有無での比較では、有意な差が見られなかった
つまり、脳の血管を守り、将来の認知症リスクを遠ざけるという観点では、コーヒーよりも緑茶が優位である可能性が示唆されたわけです。まだ、「関連性がある」ことにとどまっており、因果関係が完全に証明されたわけではありませんが、実に興味深い結果と言えるでしょう。
カテキン・血圧・テアニンの相乗効果|緑茶が脳を守る3つの理由
では、なぜ緑茶はこれほど脳によい影響を与えるのでしょうか。その理由は、含まれる成分の“トリプル効果”にあると考えられています。
まず1つ目は、「カテキンの抗酸化・抗炎症作用」です。カテキンとは、緑茶の苦渋味成分であるポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用や抗菌作用を持ち、体脂肪低減、コレステロール低下などに関与する機能性成分です。加えて、カテキンは直接神経細胞を保護する働きがあることも報告されています。
2つ目は、「血圧を下げる作用」です。複数のメタ分析により、緑茶には血圧を低下させる可能性があることが示されています。血圧の安定は脳血管への負担を減らし、脳の健康につながると言われています。
3つ目は、「テアニンによるリラックス効果」です。テアニンはお茶特有のアミノ酸で、ストレス軽減や血圧上昇の抑制に関与するとされています。
各作用の強さには個人差がありますが、これらの働きが組み合わさることで、脳の健康維持に役立っていると考えられます。
ペットボトルのお茶にはないメリットは? 成分・安全性・コストに違い
「同じお茶なら、手軽なペットボトルでもよいのでは?」と疑問に思われるかもしれません。
しかし、健康成分の「質」と「量」という点で、急須で淹れるお茶に優位性があると考えられています。重要なのは以下の2点です。
1. カテキンの安定性と含有量の違い
緑茶の健康パワーの源である「エピガロカテキンガレート(EGCG)」などのカテキン類は、非常にデリケートです。ペットボトル飲料は、作る際に高温殺菌工程があるため、EGCGの一部は別の物質(GCG)に変化してしまいます。また、保存期間が長くなるとカテキンの酸化が徐々に進み、機能が低下する可能性を指摘する声もあります。
2. マイクロプラスチックの懸念
プラスチック製ティーバッグを沸騰したお湯に浸すと、膨大な量のマイクロプラスチックが発生する可能性が報告されています。ペットボトル自体の健康リスクは、現時点では大きくないとされています。しかし長期的な視点で見れば、茶葉を直接急須で躍らせる伝統的なスタイルの方が、余計な心配をせずに済むと言えるでしょう。
そのほかにも、味や満足感、コストの点でもメリットがありそうです。急須で淹れたお茶は茶葉がしっかり開き、香りやうまみが引き出されます。温度調整も可能なため、ペットボトルのお茶では難しいまろやかさや甘みを感じやすいのが特徴です。
さらにコスト面でも優秀です。ペットボトル(約160円)に対し、急須なら高品質な茶葉を使っても1杯数十円程度。毎日3杯飲めば、年間で数万円の差になります。
急須で淹れるお茶習慣をつけることは、脳にもお財布にも優しい習慣と言えそうです。
急須で淹れる緑茶習慣を続けるコツは? 1日3杯、リラックス時間の活用を
さて、ここまで読んで「明日から急須で淹れたお茶を飲もうかな」と思ったあなたへ。より効果的に緑茶を生活に取り入れるためのコツをお伝えします。
■「1日3杯」(約600ml)を目安に
研究データによれば、大脳白質病変のリスク低下が顕著だったのは「1日約600ml以上」の摂取でした。朝・昼・晩の食事のタイミングや、仕事の合間に1杯ずつ分けて飲めば、この目安量は無理なく達成できそうです。
■「急須で淹れる時間」を最高のリセットタイムに
お湯を沸かし、茶葉が広がる。香りを楽しみ、ホッと一息つく時間そのものが、「最高のリセットタイム」になり、ストレス軽減につながります。数分間のゆとりの時間を持つことは、お茶の健康効果を最大限に引き出してくれるはずです。
■温度を使い分ける
カテキンをしっかり抽出したいときは少し高めの温度で、うまみやテアニンを味わいたいときは少し冷ましたお湯で淹れるのがおすすめです。
あまりに熱すぎるお茶は喉への負担になるので、適度な温度で楽しんでくださいね。日々の小さな習慣が、将来の脳と体の健康を支えてくれます。
■参考文献
1.Mingchuan Yang,Li Zhou,Zhipeng Kan,et al. Beneficial health effects and possible health concerns of tea consumption: a review.Beverage Plant Research 5, Article number: e035 (2025)
2.Shutaro Shibata,Moeko Noguchi-Shinohara, Ayano Shima,et al.Green tea consumption and cerebral white matter lesions in community-dwelling older adults without dementia.NPJ Sci Food.2025 Jan 7;9(1):2.







