一方のガーデニング大国、アメリカの場合はどうでしょう。この国の場合、園芸療法はもっと体系的、組織的に取り組まれてきたようです。
「園芸療法」という考え方を初めて確立したのがこの国で、1880年代に、フィラデルフィアのフレンズ病院で野外で土に触れる作業が精神に病をもつ患者の回復に役立つことを気づき、積極的に行われるようになりました。
その後、20世紀半ばころ、第2次世界大戦やベトナム戦争から帰還した傷痍軍人の身体的、精神的なリハビリとして園芸療法が取り入れられ始めます。研究者によるワークショップや大学でのカリキュラムを通じてしだいに認知が高まり、独自のプログラムを行う積極的な施設も増えはじめてきました。
そして、1983年にはアメリカ園芸療法協会が設立され、その後、園芸療法士の育成や啓蒙普及などがいっそう活発に行われるようになってきました。
●日本---90年代からポピュラーに。施設で積極的に取り入れられる
それでは、わたしたちの国、日本ではどうでしょう。20世紀前半から一部の精神疾患患者の作業療法として、園芸を取り入れるところがありましたが、積極的に取り入れられはじめたのは、1965年の作業療法士制度の導入からだといわれています。
しかし、一般に認知が広がるようになったのは、1993年にアメリカのダイアン・レルフ博士が日本で講演を行ってからのことで、ワークショップや研修会を通じて「園芸療法」という言葉がしだいに知られるようになり、日本の各地で活動が広がり始めました。
日本緑化センターが1996年に行った調査によると、園芸療法に取り組む施設は、身体障害者を収容する施設では約半数、精神疾患患者を収容する施設では7割以上という回答が得られました。特に精神疾患患者を収容する施設では、その効果に対する評価も高いという結果となり、園芸療法の急速な普及がうかがわれます。
●あの青臭い緑の香りが、ストレスをなくす!
ガーデニングには、五感をフルに使うために感性が豊かになる、植物を育てたり収穫することで人間が本来もっていた原初的な感覚を研ぎすます、外気のもとで作業をすることで体が丈夫になるなどのさまざまなメリットがあることが知られています。
また、植物のにおいなどで嗅覚を刺激することは、感情的な記憶を呼び覚ますため、心の安定にとてもよい効果があるといわれています。
最近植物のにおいの作用について、たいへん興味深い研究結果が発表されました。京都工芸繊維大大学院の中島敏博助教授が行った実験によると、ラットの四肢を縛ってストレスを与え、血中で副腎皮質ホルモン(ストレスホルモンの一種)が増加した状態にさせたあと、2時間拘束したまま緑の香りの代表物質である青葉アルコールと青葉アルデヒド混合液を30分間かがせたところ、このホルモンの量が半減していることがわかりました。また拘束を解いて2~4時間後に30分間かがせたところ、拘束する前の状態に戻ったことが明らかになりました。
この結果により、なんらかのストレスを受けた状態で緑の香りをかぐと、ストレスをなくしてくれる効果があるということが明らかになりました。
5月はガーデニングにぴったりのシーズン。緑の効能を全身で受け止めてストレスを吹き飛ばし、心身ともにリフレッシュしてはいかがでしょうか。
参考文献:『花卉園芸大百科6 ガーデニング/ハーブ/園芸療法』農文協/『園芸療法のすすめ』創森社/asahi.com
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