心の病を機に変えなければならないこと「元の生活に戻らなきゃ」というあせりが、心の病を長期化させることも「寛解」という言葉の意味を知ると、がっかりする人も多いでしょう。「完全には治らないのかな」「半病人ってことかしら?」などと思うかもしれません。こう感じるのは、「このままじゃいけない」「今までの生活に早く戻さなきゃ」という思いがあるからではないでしょうか。しかし、寛解という状態を理解し、心の病を再発・長期化させないようにするには、その発想を転換させなければなりません。なぜなら心の病の場合、回復してきて寛解の状態になった頃が、最も注意が必要だからです。「元気になったから、早く復職しよう」「今までの遅れを取り戻そう」と思って、すぐに元のペースに戻すと、突然病気が再発することが多いのです。そして、一度再発するとさらに再発率は高くなり、長期化しやすくなります。心の病が教えてくれる大切なこと心の病になると、今まで見えなかったものが見えてくる心の病になったときには、今までの生活のスタイルやペースへのこだわりを捨てることも必要になるでしょう。しかし、心の病になるのは、必ずしもマイナスとは限りません。それまでの自分には見えなかった「人生の奥深い意味」や「かけがいのないこと」に、気付くチャンスかもしれないからです。たとえば、心の病ではないのですが、若年性アルツハイマー病患者の人生を描いた『明日の記憶』はそれを示唆する名作です。仕事一筋で順風満帆に人生を歩んできた人が、病気をきっかけに何を発見したのか、自分や家族はどう変わったのか。心の病による心情の変化を理解するためにも、参考になる映画です。自分や家族が、実際に大きな病気を経験しなければ分からないことはたくさんあります。極端な言い方ですが、心の病とは「本当に大切なこと」への気づきを促す“心からのメッセージ”なのかもしれません。参考文献/大野裕『「うつ」を治す事典』法研 2003、『産業カウンセリング入門 改訂第3版』(社)日本産業カウンセラー協会 2006前のページへ12※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。免責事項