国立健康・栄養研究所の近藤和雄氏が著した『専門医がやさしく教える活性酸素』(PHP研究所)という本には、空気の出入りを自由にした250ミリリットルの小さな容器と27リットルの大きな容器を用意し、それぞれにイエバエを入れて飼育してみたところ、大きな容器に入れたイエバエは小さな容器に入れたイエバエより、寿命が半分しかなかったという実験結果が紹介されています。
この結果から、狭い空間のなかで少ない動きで過ごしたイエバエより、広い空間で自由に飛びまわれたイエバエのほうが運動量が多く、たくさんの酸素を消費して活性酸素の発生量が増えたために、寿命が短くなったのではないかと考えられています。
また同著には、男性より女性のほうが長寿なのは基礎代謝量(何もしていなくても体が消費するエネルギー量)の差が関係している可能性があるという説があることも紹介されています。男性は女性よりも10%ほど基礎代謝量が多く、それだけ酸素の消費量も多いため、活性酸素の害も受けやすくなることも一因しているのではないか、と考えられているそうです。ただし、女性の長寿には、ほかにもホルモン説などさまざまな要因が考えられるため、現時点では、基礎代謝量の違いだけで寿命との関係を決められないのは事実でしょう。
これらの説を総合すると、健康のためには、なるべく体を動かさない方がやはりいいのでしょうか?ことはそう単純ではありません。運動をしなければ筋肉が衰え、少し動いただけでも疲れやすくなってしまいます。また、骨が衰え、骨粗しょう症などの要因をつくってしまったり、血行が悪くなり、冷えやむくみを招くことにもなりかねません。心身のためにはやはり適度な運動は必要ですが、運動をするときの心得とはいったいどんなことなのかを、次のページで見てみましょう。
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