ストレス

家族の「ギャンブル依存症」にどう対処する?(3ページ目)

ギャンブル依存症の夫をサポートし、家族としてこの病気と立ち向かっている女性へのインタビュー。当事者を前に家族はどう行動し、何に気をつければいいのでしょうか?

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

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家族が向き合って、正面から話し合うことが大切

――ご自身の「世話女房気質」を改めることで、ご主人が自ら病気と立ち向かえるようにしたわけですね?

そうです。依存症は、いくら周りが頑張っても、本人が「もうこれ以上、自分や家庭をダメにしたくない」という「底つき感」を心から味わわないかぎり、繰り返してしまうのです。

本人に、この「底つき感」を実感させるために、借金返済の尻拭い、借金督促の電話や手紙の応対、借金の司法的処理などはせず、すべて本人にやらせるようにしました。もどかしくても、本人がやるべきことに先回りして手を出さず、じっと見守っています。また、本人から依存に陥った経緯を話してくれなくても、無理に聞き出そうとしないことも大切です。

依存症者は、何度「心を入れ替えた」と言っても、同じ失敗を繰り返します。家族はそのたびに裏切られ、「もう話もしたくない」という気持ちになるかもしれません。しかし、そこで無視してしまったら、依存症者である本人の心に「今度こそしっかり治そう」「家族のために、もう一度やめることに挑戦しよう」という意欲が湧いてこないと思うんです。その人と家族でいることを選んだ以上、何度繰り返しても、相手を信じて待つことが大切だと思います。


――手助けはしないけれども、いつもそばにいて見守ることですね。

また、前にも触れましたが、会話によってお互いの心情の変化や、現在の気持ちを確認していくことも大切です。話すことでストレスを回避でき、再発の予防にもつながると、経験から感じています。「私さえガマンすれば」という気持ちを白紙にし、思いを素直に相手にぶつけること。日本には「協調性」を美徳とする文化があるため、自己主張を「わがまま」と捉える傾向もあります。しかし、単なるわがままと自分の気持ちを主張することはまったく別です。

そして、自分の「ガマン」が相手によい影響を与えているだろうか、自分は「都合のいい人」になってないだろうか、といったことを、ときどき客観的に見つめてみることが大切だと思います。つい先回りして世話を焼いたり、相手を失うのが怖くて都合のいい人間になっているようなら、相手と正面から向き合って会話し、思いのたけをぶつけてみてください。これ以外に、お互いの信頼関係を強くする方法はありません。「こう言ったら嫌われるから、ガマンしなきゃ」と思うのは、相手と向き合うことを逃げている証拠だと思います。

――最後に、お子さんたちには、どのように接していますか?

子どもには、「何を与えたか」「何を話したか」ではなく、「何を見せてきたか」「何を見せていくのか」が重要だと思っています。誰にでもストレスを抱え、心が病んでしまうことは起こりえます。しかし、そのときにどう立ち向かっていくかを、実態のない言葉で伝えるより、実際の姿で見せていくことが親の役目だと思います。

片方の親がギャンブルに依存している姿、もう片方の親が無言で尻ぬぐいをする姿を見せていれば、子どもには「辛いことがあったら、ギャンブルに逃げればいい」「借金で困っても、家族がなんとかしてくれる」という間違った考えを与えてしまいます。一方、夫婦がしっかり会話をしてこの問題に立ち向かい、失敗してもあきらめずに解決していく姿を見せれば、子どもの心には、「つらいことがあっても、何かに依存しないで生きよう」「たとえ家族がつらい局面を迎えても、投げやりにならずに一緒に解決していこう」という気持ちが根付いていくのではないかと思っています。


インタビューを終えて

大切な人が窮地に陥ったら、「何かしてあげたい」「手を貸してあげたい」と思ってしまうもの。しかし、相手はその助けに安心し、病気をエスカレートさせてしまう。それが、依存症の恐ろしさなのです。

自分の問題は自分で解決させること。何度、失敗を繰り返しても、相手が自分で解決することを信じて待ちつづけること。そして、相手との信頼関係を強くするために、十分に会話を重ねること。それが大切なのだと、お銀さんは教えてくれました。そして、夫との絆をしっかり確認しあいながら、この依存症に立ち向かっています。


インタビューした方のホームページ 「join in the laughter~一緒に笑おうよ~」
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