家族が向き合って、正面から話し合うことが大切
そうです。依存症は、いくら周りが頑張っても、本人が「もうこれ以上、自分や家庭をダメにしたくない」という「底つき感」を心から味わわないかぎり、繰り返してしまうのです。
本人に、この「底つき感」を実感させるために、借金返済の尻拭い、借金督促の電話や手紙の応対、借金の司法的処理などはせず、すべて本人にやらせるようにしました。もどかしくても、本人がやるべきことに先回りして手を出さず、じっと見守っています。また、本人から依存に陥った経緯を話してくれなくても、無理に聞き出そうとしないことも大切です。依存症者は、何度「心を入れ替えた」と言っても、同じ失敗を繰り返します。家族はそのたびに裏切られ、「もう話もしたくない」という気持ちになるかもしれません。しかし、そこで無視してしまったら、依存症者である本人の心に「今度こそしっかり治そう」「家族のために、もう一度やめることに挑戦しよう」という意欲が湧いてこないと思うんです。その人と家族でいることを選んだ以上、何度繰り返しても、相手を信じて待つことが大切だと思います。
――手助けはしないけれども、いつもそばにいて見守ることですね。
また、前にも触れましたが、会話によってお互いの心情の変化や、現在の気持ちを確認していくことも大切です。話すことでストレスを回避でき、再発の予防にもつながると、経験から感じています。「私さえガマンすれば」という気持ちを白紙にし、思いを素直に相手にぶつけること。日本には「協調性」を美徳とする文化があるため、自己主張を「わがまま」と捉える傾向もあります。しかし、単なるわがままと自分の気持ちを主張することはまったく別です。
――最後に、お子さんたちには、どのように接していますか?
子どもには、「何を与えたか」「何を話したか」ではなく、「何を見せてきたか」「何を見せていくのか」が重要だと思っています。誰にでもストレスを抱え、心が病んでしまうことは起こりえます。しかし、そのときにどう立ち向かっていくかを、実態のない言葉で伝えるより、実際の姿で見せていくことが親の役目だと思います。
インタビューを終えて
大切な人が窮地に陥ったら、「何かしてあげたい」「手を貸してあげたい」と思ってしまうもの。しかし、相手はその助けに安心し、病気をエスカレートさせてしまう。それが、依存症の恐ろしさなのです。
自分の問題は自分で解決させること。何度、失敗を繰り返しても、相手が自分で解決することを信じて待ちつづけること。そして、相手との信頼関係を強くするために、十分に会話を重ねること。それが大切なのだと、お銀さんは教えてくれました。そして、夫との絆をしっかり確認しあいながら、この依存症に立ち向かっています。
インタビューした方のホームページ 「join in the laughter~一緒に笑おうよ~」