家族の尻拭いが、依存をさらにエスカレートさせてしまう
そうです。義父がギャンブルで作った借金を義母が一人で尻拭いし、家計を支えてきたそうです。しかも、夫は高校生になるまで、その義母の苦労を全く知らなかったそうです。
夫が初めて借金を打ち明けたとき、「親父だって家を売るほど借金したけど、全然平気だった」と口にして驚いたのですが、「ギャンブルで借金をする父」「それを黙って尻拭いする母」を間近に見て、甘い考えを持ってしまったのではないかと、私は思っています。
――依存症克服には、家族がどう支えていくかが重要です。その点はどうされたのでしょうか?
まず、会話することから始めました。この問題に関わり、たくさんの家族の話を聞く機会がありましたが、会話が「親子間」にしかなく、「夫婦間」に少ない家庭が多いことに気づきました。実際、私も3人の子育てに追われ、十分な夫婦の会話を持てずにいました。たとえば、子どもを寝かしつけている時間に夫が帰宅したりすると、夕食の用意もせず、義母に任せていましたし、就寝時間も違うため、ゆっくり会話ができなかったのです。
――子育てが忙しく、ご主人と向き合う余裕がなかったんですね。
それだけではなく、「相手の話をじっくり聞く」ということを軽視していた面もあります。職場結婚だったため、夫の仕事の状況が分かるばかりに、話をろくに聞かずに「ああすればいいじゃない、こうすればいいじゃない」とまくし立てていたこともありました。そこで初心に帰り、子どもを寝かせた後には「夫婦の時間」を持つようにして、会話を増やしていきました。
――家族がサポートの仕方を間違うと克服を妨げてしまうと言われますが、接し方ではどんなことに気をつけましたか?
「世話を焼きすぎてはいけない」ということです。しかし、このことに気付いたのは、かなり後になってからでした。私の「世話女房気質」が、夫の依存症をエスカレートさせてしまったと思います。
――あなた自身の気質も、家庭環境との関係があるのでしょうか?
そうです。私の母がすごく世話好きで情に厚い人なので、「女房は家族の世話を焼くものだ」と思って育ってきました。また、私は父を20歳で亡くしたこともあり、「好きなことをしても、生きてさえいればいいじゃないか」という気持ちが強かったのです。
そのため、夫がパチンコ好きでも、「ストレス発散になるし、たまにはいいじゃない」と許してしまい、依存症にまで進んでいたことに気付けなかったのです。また、「夫が喜ぶなら」と何でも希望をかなえてしまったり、どんなことも、夫の希望を優先させていたので、しだいに、会話から「私が」という主語がなくなっていたことにも気づきました。
親密な関係にある他者と、適度な精神的距離感を持って付き合えないことを「共依存」というのですが、私にも、この側面があるのかもしれません。
■共依存とは?
他者への依存心が強く、精神的な境界線を引けないあまりに、自分を犠牲にしてまで相手に尽くしたり、相手の行動や考え方をコントロールしようとする、人間関係に依存する依存症。依存症患者の家族に多い。