お年寄りの意欲をチェック!
ひとりひとりを見つめるポジティブな介護に期待しましょう! |
そもそも要介護度自体、絶対的なものではありません。不服申請があれば、簡単に覆されてしまうこともあります。したがって、要介護度は必ずしも心身機能回復の尺度とはいえません。また、筋力は年齢にしたがい、落ちていくもの。筋力トレーニングをおこなったからといって、すぐに向上するものではありません。
それより、「レクリエーションに参加するようになった」、または「参加はしないが、そばで見守るようになった」といった変化を評価してもよいのでは、と片桐さんは言います。「また、これは男性に多いのですが、筋力トレーニングのマシンに興味を持ち、何度でも利用する方がいます。実際に筋力がついた、つかないはべつとして、こうした意欲をしっかりチェックすることも大切です」。
つまり、お年寄りの関心度やその方向性を見つめるとともに、どんな介護予防が向いているかをつねに考えなくてはならない、ということ。一把ひとからげの内容では、対応できないことになります。
ひとりひとりの状態を見つめる介護に
利用者や家族の皆さんの中には、これまでの通所サービスの内容に対し、「100%満足はできない」という方もいたのでは。全員参加型の風船パレーや童謡合唱、屈伸運動。どれも心身機能の向上に役立つものばかりですが、「年寄りをなめるな」とそっぽを向いてしまうお年よりもいたはずです。「お年寄りひとりひとりを見つめなければ、予防介護はうまくいきません。これまでのように『今日は利用者さんが○人いるから、こんなリクエーションをしよう』という発想ではなく、『この人とこの人がいるから、こんなリクエーションが合っている』という考え方に切り替えてください。施設側の都合ではなく、利用者を見つめる姿勢が大切です」。
そのためには、スタッフが個人の趣味や生活歴をしっかり把握していなければならない、と片桐さんは強調します。「運動が好きか、嫌いか。趣味は何か。普段の暮らしぶりはどうなのか。それらを頭に入れた上で、体力や疲労の状態などもちゃんと見てましょう」
口腔ケアについても同様です。「通所施設の中には、利用者さんが最初に来所したときに、歯の状態を聞いて、さっさととろみ食か常食かなどを決めてしまうところがあります。でも、食事をするときの口の動きは複雑なもの。歯だけでなく、舌や口筋なども使います。ほとんど歯がなくても、肉が食べられる人もいるほど。
これからは、『どんなときにむせるのか』『食べているとき、舌は外に出ていないか』『喋るとよだれが出ないか』など、詳しくチェックしてみてください。そのうえで、必要な嚥下体操や口筋トレーニングを行いましょう」
介護予防はポジティブ思考で
「介護予防はポジティブ思考でおこなってほしい」と片桐さん。これまでは「しっかり歩かないと、寝たきりになりますよ」「嚥下体操をしないと、ミキサー食を食べることになりますよ」という「脅迫介護」をしがちでした。しかし、「こうすれば、もっと生きることが楽しくなる」という働きかけをおこなえば、お年よりも俄然、ヤル気が出てくるはず。これは、在宅介護でも、ぜひ見習いたい姿勢といえます。介護予防の導入にあたり、まだまだ混乱の只中にある通所施設は多いようです。しかし今後、「ひとりひとりを見つめる介護」「ポジティブ思考の介護」がほんとうに行われるとしたら、利用者にとってこんなに嬉しいことはありません。
平成18年度より、通所施設のサービス内容や運営状況が、インターネットで閲覧できる「介護サービス情報の公表」が始まります。どんな介護予防が行われているか、よく調べ、施設を選びたいものです。
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