企業のIT活用/IT関連法律の注意点

中小企業の資金繰りを支援 電子手形スタート(3ページ目)

企業間の新たな支払い方法として、電子手形が2009年11月からスタート。略して電手(でんて)や電債(でんさい)と呼ばれています。電子手形は紙の手形に替わるもので、管理コストの削減や印紙税の負担がなくなります。紙ではできなかった分割割引などができ中小企業の資金繰りを支援します。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

電子手形とは

電子手形を使えば銀行へ取り立て依頼に行かなくても口座に自動的に入金される

電子手形を使えば銀行へ取り立て依頼に行かなくても口座に自動的に入金される

紙の手形が持つ問題点を解消し、中小企業の円滑な資金調達を実現するための新しい金銭債権として電子手形が生まれました。特徴は、債権の内容を紙ではなく電子的記録によって管理することにあります。根拠法として電子記録債権法が2008年12月に施行されました。

電子手形の仕組みを見ていきましょう。手形を発行する企業が当座預金を持つ点や不渡りのルールも変わりません。取引銀行以外に電子債権記録機関が必要になります。

電子債権を記録、管理する機関で民間の登記所になります。2009年10月現在では三菱東京UFJ銀行の子会社である日本電子債権機構(JEMCO)が、国内唯一の電子債権記録機関となっています。

利用料金は電子手形の金額に関係なく、発行など1行為あたり210円の手数料、電子署名の年間手数料は1万500円程度になる予定です。

電子手形を活用する場合、買い手が電子債権記録機関に電子手形発生記録を申請します。売り手には記録機関からFAXで債権発生予定が通知されますので、事前に分かります。取引日に電子手形が発行され記録機関の原簿に記録されます。

紙ではなく、コンピュータで管理ができるので保管、管理コストが低減します。印紙税の負担もなくなり紛失・盗難リスクもありません。手形を保管していた金庫がいらなくなり、電子債権ですので輸送の問題も発生しません。さらに、紙の手形にはなかった電子手形ならではのメリットがあります。

自社の口座に自動入金される

紙の手形では、売り手は期日管理をしっかり行わわなければなりません。手形の支払い有効期限は期日日を含め3営業日内で、通常は期日前に取り立て依頼を銀行に出します。経理担当者がポカミスをして、取り立て依頼を忘れ有効期限を過ぎると最悪の場合、入金がなくなります。また、銀行で審査が行われるので現金化は翌営業日になります。
記録機関を活用し電子データだけのやり取りで電子手形が売り手に渡る

記録機関を活用し電子データだけのやり取りで電子手形が売り手に渡る

電子手形では、支払期日の2営業日前に記録機関から売り手にFAXまたは電子メールで知らせてくれます。また銀行に出向いて取り立て依頼をしなくても、支払日に記録機関が取引に使っている口座に自動振込してくれます。無審査での現金化ですので、すぐ他の資金用途に活用できます。振込決済が終わると記録機関の原簿から電子手形が消えます。

電子手形は1円単位で分割できる

50万円の資金調達が必要な場合、100万円の紙の手形があれば銀行に持ち込んで手形割引ができますが、100万円から割り引いた額が現金化されます。必要な50万円だけという分割はできません。

電子手形の場合、1000円以上1円単位で分割することができます。電子手形の一部を割引して資金調達にまわし、残りはそのまま保持できます。さらに一部を譲渡して資金決済にあてることもできます。記録機関へ申請するだけで手形を使った機動的な取引ができます。

メリットが多い電子手形ですが、課題もあります。偽造発生を防ぐためログイン時に厳格な個人認証が必要です。また企業、記録機関、金融機関の通信途中での改ざん防止の仕組みが必要となります。パソコンで申込などが簡単にできるため、これまで以上に企業ではパソコン側でのセキュリティ対策が必要となります。

課題もありますが電子手形は中小企業にとって便利な代金払い方法であり、資金調達方法です。ますます拡大していくでしょう。

■関連サイト
電手情報ポータルサイト


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