大学生の就職活動/大学生の就職活動関連情報

ニート。働けない人。(前編)(3ページ目)

ニート(新卒無業者)に至る原因は大きく二つ。「働く自分に対する自信の欠如」と「根拠の無い特権意識」だ。それが原因で就職活動を途中で離脱する4つのパターンを考察する。みなさん自身の離脱を防ぐために。

執筆者:見舘 好隆

就職活動からの離脱・第一段階「就職活動以前」


第一段階での就職活動の離脱は、そもそも大学に入学した時点で何も前に進んでいない状態だ。

一昔前までは、「大学に進む」イコール「企業へ就職するもしくは進学する」ことが明確だった。「高卒で就職する」ということは、合格できなかったか、経済的な理由か、家業を継ぐなどの要因があった。でも今はご存知の通り、少子化で大学・短大への進学希望者は2007年度に約69万9000人まで減り、全校の合格者数の総計と同数となる。つまり、大学のランクや種類にこだわらなければ、3年後には志願者全員が入学できる「全入時代」に突入するのだ。よって「合格できない」から進学しない理由はほぼゼロになる。また、家業を継ぐ継がない問題も一旦大学へ行くことを否定する決定的な理由にならないだろう。経済的な問題を除き、大学進学は「なんとなく行ける」時代になっていることは確かだ。

この「なんとなく」が厄介。「なんとなく」では、仕事や就職を意識するきっかけはもちろん、それに対する努力など期待はできない(きっと私のこの記事すら目にすることは無いかもしれない)。当然、働く自信など芽生えることはありえない。玄田有史さんも『ニート』の中で語る。

「ニートは『働かない』のではない。『働けない』のだ。ニートは『働きたくない』のではなく、なぜか『働くために動き出すことができない』でいるだけだ。動き出すために、未知の誰かからの早い時点でのきっかけを必要としているのだ」

さて、「未知の誰かからの早い時点でのきっかけ」とは何だろうか。大学のカリキュラムでは間に合わない。もっと以前の段階、例えば中学生あたりから仕事に触れる、就職を意識するカリキュラムを導入することが最善策と言える。杉並区立和田中学校校長の藤原和博さんは語る。

「教育が考えさせることをなるべくさせないシステムだったという問題がありますよ。小中高と、基本的には、覚えろと言われる。(中略)学校というのは、放っておくと異質なものが入ってこないんですよ。学校に異質なものが投入されなければ、コミュニケーションは起きないし、思考回路は起動しない。だって、起動させなくていいんですから。」(出典:『週刊ダイヤモンド』2004/03/13「13歳にハローワークは必要か」)

藤原さんは実際、「よのなか科」という授業の中で、異質なものを無垢な中学生にぶつけている。「ホームレス問題を考える」では本物のホームレスを、「ニューハーフの存在を通して“差異”と“差別”を考える」では女装家の三橋順子さんを、「少年法の解説とケースのディベート」では女性弁護士の中西紀子さんをゲストとして呼んでいる。きっと学生はその刺激によって好奇心を発動させているだろう。仕事や就職への意識は、この頃の土台作りが最も大切な気がする。

あと「未知の誰かからの早い時点でのきっかけ」は親自身も与えることができる。その方法とは、親が自分自身の人生を楽しみ、それを子供にプレゼンテーションすることだ。『13歳のハローワーク』の著者・村上龍さんは語る。

「まず、自分の人生を充実させてほしい。楽しくない人生を送っていると、子どもも人生は楽しくないと思ってしまうかもしれない。それはすごく怖いことなんですよ。子どもの好奇心って、本当にすごいと思うんです。好奇心がなかったら、生きていけないですから。」(出典:『週刊ダイヤモンド』2004/03/13「13歳にハローワークは必要か」)

確かに、親が働く姿をみることは、昔よりも少なくなった。直接みなくても、どんな仕事をしていたかは把握していた。でも今の仕事はどうだろうか。リクルートワークス研究所の豊田義博さんは語る。

「自分の会社や仕事の説明をするのは意外と難しい。(中略)60年代以降、サラリーマンの急増とともに一般生活や家庭から『仕事』が切り離され、そのイメージは希薄なる一方だが、この10年の間に、希薄化だけではなく『難解化』『バーチャル化』も加速した。そうした仕事に、共感したり、自分がそれをするというリアリティをもったりすることができるだろうか。」(出典:『Works』2004/08/09「大卒無業問題を解く鍵のひとつは企業にある」)
中学生あたりから仕事に触れる、就職を意識するカリキュラムを導入すること
  • 親が自分自身の人生を楽しみ、それを子供にプレゼンテーションすること

  • この二つのアプローチが、就職活動からの離脱・第一段階「就職活動以前」を抑止する方法だろう。


    ※次のページで、就職活動からの離脱・第二段階「就職活動スタート時」を考察しよう。
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