「介護職には大いに語りあってもらって、意見をどんどん発してほしい」と堀田さん |
まだまだ介護の仕事とは何かが
知られていない
介護サービスの質を考えたとき、どうしても介護職一人ひとりの意識の問題も大きくかかわってきます。堀田さんは「意識が高い層も、高くはない層もいていいと思う」と語りつつ、しかし「社会的評価を向上させたいと叫ぶのなら、一人ひとりがそれに恥じないような日々を送らなくては」と指摘。利用者から見れば、自分の目の前にいるヘルパーが、施設職員が、介護職の代表。そうとらえられてしまう現実を、もっと深く認識すべきだと堀田さんは言います。「訪問介護のヘルパーは、もともとは『家庭奉仕員』としてスタートしています。いわば、家事の延長線上にヘルパーの仕事があったという成り立ち。専門職として位置づけられるようになったのも最近のことです。だからこそ、家族から見たときに『私だってできる』と言われかねない介護職の専門性を、一人ひとりがいかに高めていけるのかが問われています。その部分が社会的評価にも大きく影響していると思いますし、しっかり意識してほしいですね。
それと同時にもう一つ言いたいのは、介護職のなんたるかを、もっと外に向かって伝えてほしい、ということ。介護の仕事の社会的評価が高まっていないのは、質の問題も、一人ひとりの意識の問題もあると思いますが、それに加えて介護の仕事とは何かが知ってもらえていないことも大きな要因だと思うんです。
看護職とも家族とも違う、介護の専門性のコアになる部分が何かと問われると、私も答えられません。しかし、介護職のみなさんは自分自身の経験の中で、答えを持っているのではないでしょうか。ヘルパーの仕事は外から見ると、一見、いつも、誰でも、同じことをやっているように見えるかもしれません。しかし、実はその時々の臨機応変な判断があり、その判断には根拠があります。それは当然、家族とも家政婦さんとも医療職とも違う。介護職には、介護職ならではの利用者の生活を支えていく関わり方があるわけです。
だから、掃除や食事や排泄のような目に見える介助だけでなく、目に見えない部分についてもっと語ってほしい。おそらくそこに専門性があると思いますし、介護職の価値がある。それを自分たちで言葉にする努力を続けてほしいと思うんです」
介護職同士で専門性について語り合う
介護職の専門性とはよく言われることですが、言葉にしようとすると実に難しいものです。また、それを誰に向かって語っていったらいいのか。その点について、堀田さんに尋ねてみました。「まずは介護職同士がつながって語り合い、自分たちがやっていることを確認しあうことが大事です。今、介護職は確かな評価がないために、自信をなくしている人が多いと思う。だからこそ、語り合うことで自分たちがやっていることの価値を確かめ、自信を深めてほしいんです。
語り合うことによって、他の人が感じていて自分が気づいていない介護の仕事のおもしろさに気づけるかもしれない。たとえば同じ利用者さんのところにヘルパーとして入っていても、感じ方、取り組み方など、違うことはたくさんあるはずです。人の話を聞き、それぞれが考えるケアのあり方をすりあわせることで、こんなこともできるのかと気づく。おもしろさに気づけば意識は高まりますし、仕事への自信も深まります。
その上で、外に向かって発してほしい。書いたり話したりするだけでなく、たとえば介護教室や子どもたちとの触れあいや、いろいろな形での交流の場で見てもらう。次の段階として、見てもらうだけでなく、その意味について語る。見てもらったのはオムツ交換だったかもしれないけれど、その後ろにどういう判断があったのか。記録があって、情報交換があって、日々の脈々としたものがあって初めて、実際の介護が出てくることを伝えていく。
見た側が感じた介護の仕事と、そこで行われている営みの意味づけをすりあわせることでこの仕事の本当の意味や難しさ、可能性、限界がたぶん伝わっていくと思うんですね。そうした積み重ねで、もう少し介護の仕事について知ってもらうことができ、知ってもらうことで、対価を払う価値のある、専門性のある仕事であることが理解されるのではないでしょうか。それが社会的評価を向上させる第一歩。そう考えると、介護の現場はもっと多くの人に知ってもらう努力を続けていかなくてはならないと思います」
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