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ドイツ介護保険は日本とこう違う【後編】(3ページ目)

日独の介護保険比較記事の2回目。日本の介護保険はドイツを参考に作られましたが、大きく違う部分もあります。ドイツと日本の介護保険制度の違いを整理する後編。今回は「要介護認定調査」と「給付」について。

執筆者:宮下 公美子

施設介護を受けるには給付額以上の自己負担あり

一方、ドイツの施設介護の給付は要介護3でも1470ユーロ(約18万円)。日本では要介護5の施設介護報酬は特別養護老人ホームで約28万円、介護療養型医療施設で約40万円ですから、ドイツの給付額は非常に少ないと思います。この給付だけで施設介護が受けられるのかと言えば、そうではありません。

ドイツでは、日本の特別養護老人ホームのような安価な施設で月3000ユーロ(約36万6000円)程度、高級な民間のホームでは月6000ユーロ(約73万2000円)程度かかります。つまり、要介護1であれば、少なくとも1600ユーロ(約19万5000円)程度は自己負担になるわけです。しかし自己負担できない人が多く、在宅で介護せざるをえないケースが増えています。

とはいえ、ドイツの要介護3は24時間介護が必要な状態ですから、在宅での介護はかなり困難。やはり施設に入所することが多くなります。施設に入所して自己負担分が払えない場合は、すべての資産を処分し、生活保護を受けることになります。最近は、保護を受ける人が増えているそうです。

また、施設には要介護だという鑑定が下りないと入所できません。前述の通り、ドイツ介護保険では、日本における要介護3程度以下の人たちは非該当。要介護3の入所者もいる日本からすると、要介護3程度で非該当の独居の高齢者はどうやって暮らしているのだろうか、と思います。

在宅にしても、該当しないからといって介護が不要だというわけではありません。しかしドイツでは、日本での要支援や要介護3程度までの人たちに対する保険外サービスは整備されていません。制度から外れた人たちは顧みてもらえない状況なのです。このあたりも非常に課題が多いと思います。

認知症への給付は少し手厚く

認知症に関しては、2008年7月1日の介護保険制度改正により、認知症の調査が新設されたと書きました。身体的な介護が必要でないために要介護と認定されなくても、認知症調査項目のうち2項目が該当すれば、月100ユーロ(約1万2000円)、年間1200ユーロ(約12万円)の給付が認められるようになりました。該当項目が多い場合は、月200ユーロ(約2万4000円)給付されるケースもあります。これは、要介護1~3とは別枠で認定され、給付されます。

日本でも、認知症高齢者の要介護度が低く認定されがちであることが当初から指摘されていますよね。ドイツでは制度開始以来、認知症への配慮がなされず、給付がないまま13年間も置き去りだったことに驚きます。公的な支援のない状態でいったい在宅でどうやって介護をしていたのだろうかと、家族の苦労が忍ばれます。


ここまで、ドイツと日本の介護保険の違いを整理してきました。参考にして作られた、ということはよくわかりますが、こうして比較してみるとずいぶん違う気がします。

次回は、現在の日独両国の介護保険制度が抱える問題点から、今後の介護保険のあり方について考えてみます。

※1ユーロ=122円(2008年11月28日午後11時現在)として計算

※2008年の改正介護保険の内容、公認鑑定人の鑑定方法等については、在ドイツのドイツ公認介護鑑定人のかたから伺ったお話を参考にしました。

※ドイツの介護保険制度については、下記のサイトも参考にしました。

※ドイツ介護保険制度について、把握した情報をもとに自分なりに整理しています。私の理解が不十分で事実と相違している点がありましたら、ぜひご指摘いただければと思います。早急に調べて、必要に応じて修正します。

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