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総務省から厚生労働省への勧告の効果は?(3ページ目)

2008年9月5日、総務省から厚生労働省に対して介護保険事業等に関する勧告が出されました。官僚組織内にチェック機能があったとは驚き!(失礼) 果たしてこの勧告に実効性は?

執筆者:宮下 公美子

改善勧告は形式的なもの?

正直いって、そんなことを改めて指摘するためにお金と時間をかけて調査したの?という気がしますね(こんなところにも税金がつぎ込まれていると思うと……)。指摘されたすべてについてきちんとやっているとは言いませんが、さすがの厚生労働省も、指摘される以前から、ある程度は手をつけていると思います。たとえば、2008年8月に発表している「福祉・介護人材確保対策について」という政策レポ-ト。

これを見ると、総務省の調査・分析はこのレポートを参考にして書いたんじゃないの、と言いたくなるくらい、紹介されているデータも重なっています。少なくとも人材確保についての改善勧告は、事前に打ち合わせて勧告の内容を決めているのではないかと勘ぐりたくなるぐらいです。

しかし、ちょっと脇道にそれますが、このレポートに書かれている「(福祉・介護人材確保対策の)今後の進め方等」、つまり、人材確保のための対策として挙げられている内容にはがっくりです。
以下、厚生労働省の政策レポートから引用します。


(1)厚生労働省としては、この指針(「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」←詳しくはこちらの記事で)に沿って福祉・介護人材確保のための取り組みを総合的に進めていくこととしており、平成20年度においては

  1. 都道府県福祉人材センターにおける無料職業紹介や潜在的有資格者の再就業の支援のための研修の実施等
  2. 福祉・介護の仕事の魅力を伝えるシンポジウム等を行う「福祉人材フォーラム」の開催(7月27日)や国民の「介護」に対する理解を深める「介護の日」(11月11日)の創設

等に取り組んでいます。

(2)また、先の通常国会においては、「介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律」が成立し、「平成21年4月1日までに、介護従事者等の賃金をはじめとする処遇の改善に資するための施策のあり方について検討を加え、必要と認められるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」こととされています。さらに、先般取りまとめられた「社会保障の機能強化のための緊急対策~5つの安心プラン~」の中でも、「介護労働者の人材確保及び雇用管理改善の支援」や「福祉・介護サービス従事者の確保・養成の推進」などが盛り込まれているところであり、これらを踏まえつつ、今後さらなる福祉・人材確保のための取り組みについて検討を進めていくこととしています」


(1)の施策については、前述の指針に書かれていたことを再構成して一覧表にし、49ページにわたって記したものも発表されています。指針を読んだときにも感じたのですが、言っていることはもっともだし、この通りに改善されれば言うことなし、と思いますが、実現性、実効性の乏しさにうそ寒い感じがします。

たとえば、「人材確保指針に規定される人材確保のために取り組むべき措置」。
「管理者等が労働環境の改善やキャリアアップの仕組みの構築等の取組の重要性を十分認識すること等を通じて、質の高い人材を確保し、質の高いサービスを提供するための組織体制を確立すること。(経営者、関係団体等←ガイド注:主体的に取り組むべき機関)」と記され、施策の概要として「『社会福祉法人経営の現状と課題―新たな時代における福祉経営の確立に向けての基礎作業-』の作成」と「人材確保指針の周知」と記されています。

このうち「人材確保指針の周知」についての実施状況として書かれていたのは以下の3つ。
  1. 都道府県、関係団体に対し、その周知に関して協力を依頼する旨を通知
  2. 9月18 日に開催された障害保健福祉担当主管課長会議において、説明を行うとともに、資料を配付
  3. 厚生労働省ホームページに関係資料を掲載するなどの取組を実施。

そもそも、人材確保指針を周知することで、実際の人材確保にどれほどの実効性があるかについても、疑問を感じるというか、無力感がただよいますが、周知の方法として、「周知の協力を依頼」「会議で説明して資料を配付」「ホームページに掲載」という3つしかやらないことに、無力感を通り越して憤りさえ感じました。

都道府県に周知を依頼する通知を出しても、大問題になった「インスリンの注射器使い回しへの注意喚起を促す」という重要な通知すら周知されなかった実例があるというのに、このような指針を、いったいどこの行政が真剣に周知してくれるというのでしょうか。厚生労働省は本気で周知する気があるのか、と問いただしたくなります。

結局、今回のような分かり切った勧告が出されたところで、また、実効性のない実施策が発表されるだけではないか、と思ってしまいます。他の省からのチェックが入る仕組みがあると知って、ちょっと期待したのですが……。
もっと実効性のある施策を考えてほしい!

ある介護関係会社の社長が「お上に頼っていても状況はよくならない。自分たちで変えていかなくては」と言っておられましたが、出来ることを自分たちでやっていくことで行政や国を動かすしか、展望は開けないのかもしれません。

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