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必要と言いつつなぜできない介護職の賃上げ(2ページ目)

当事者である介護職はもちろん、要介護の高齢者も、厚生労働官僚も大臣も、与党議員も野党議員も、誰もが介護職の給与は安い、待遇が悪い、改善が必要だと言っています。ではなぜ改善できないのでしょうか。

執筆者:宮下 公美子


とにかく何か手を打たなくては

民主党法案で、最も批判を浴びていたのは、格差拡大になるのではないか、という点。

衆議院通用門
民主党法案には、与党から厳しい意見が相次いだ
一定水準以上の給与を払える見込みの事業所が加算を受ける、ということはつまり、水準に満たない低待遇の事業所は加算を受けられないということ。厚待遇を実現しやすい大手事業所は比較的容易に加算が取れ、ギリギリのところで事業運営している中小事業所が加算を取るには、相当の努力をしなければならない。あるいは、現状以上の努力は困難で、加算が取れない可能性も大きい。待遇の底上げにならず、ますます格差が開くばかりだ、待遇が改善されなければ人材確保がますます困難になり、中小事業所の倒産がふえるのではないかという意見です。

また、財源案に対する批判もありました。介護保険事業国庫負担分の剰余金や厚生労働省の随意契約3000億円分の見直しによる予算削減分等を充てる、というのが民主党側の案。これに対しても与党からは、「余剰額を財源とする制度はどうなのか」「流動的で将来財源不足になるのが明らか」などの批判の声が上がりました。

そして、この法案が成立、施行されたとしても、加算分を給与アップに充てるのは事業者の努力義務と規定されており、確実な待遇改善につながらない、という批判も。

どれもこれも、もっともな批判です。
民主党も、批判を退け、与党を納得させられる答弁はできていなかったと思います。

しかし、法案を提出した民主党議員の答弁には、胸に響くものがありました。
「たしかにこの法案は完全ではない。批判もわかるが、そうであれば与党も対案を出し、どちらの法案がよいか、議論できるようにしてほしかった。修正して可決しよう、と与党が言ってくれるのであれば、修正に応ずる用意はある。何より、すでに介護業界は人手不足どころか、介護福祉士の養成施設への入学者が減少の一途をたどるという危機的状況にある。法案に問題があるからといって何もしなかったら、医療崩壊に続いて、介護崩壊が起こるのは目に見えている。党派を問わず、この危機的状況の認識は一致している。とにかく何か手を打たなくてはいけないではないか」。

しかし、こうした法案提出者の訴えに対しては、与党からは「我々もよく考え、努力していかなくてはならない」、桝添厚生労働大臣からは「賃上げだけでなく、魅力ある、働きやすい職場作りやキャリアアップなど、総合的な対策が必要」という、具体論のない答弁しかありませんでした。この問題をみんなでしっかり考えていきましょう、などと、国会でのんきに言っている段階はもうとっくに過ぎているというのに。

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