事実確認・原因究明・再発防止
もし、このような事故が起こってしまったら? みなさんのデイ、施設、事業所なら、どうしますか?私は、責任者には事故の報告あるいは利用者からの訴えがあった当日のうちに、事実関係を確認し、まずは利用者とご家族に会って謝罪してほしいと思います。このケースは、それぐらい重大問題ですから。そして、原因を究明したうえで、再度報告する旨を伝えて、原因究明に取りかかります。原因がわかったら、再発防止策を考え、それをすべて職員に周知、徹底。二度と同じことが起こらない体制を整えた上で、ご家族に再度報告します。
この一連の対応を、どれぐらいの期間で行うべきでしょうか。
私が家族であれば、1週間で2回目の報告まで終えてほしいと思うでしょう。
■事実関係の確認
誰がいつ、どのような状況で、どのように判断して投薬に至ったのかを職員に聞き取ります。このとき、この職員が誰にも相談しなかったのか、相談しなかったとしたら、それはなぜかについても確認します。また、この職員が投薬しようとしていることに気がついた他の職員はいなかったのかも確認。いたとしたら、なぜそこで止めなかったのかあるいは上司に報告しなかったのかも聞き取ります。いなかったとしたら、なぜ誰も気がつかないうちに投薬できたのか、薬の管理、職員の動き方について考えます。
■原因究明
投薬は医療行為だという知識がなかったのか、認識はあったが、やってもいいと考えた職業倫理欠如の問題なのか。
相談したくても、忙しそうで相談できなかったのか、相談しにくい上司なのか、孤立している職員なのか、スタンドプレーの多い職員なのか、独断での対応が多い職員なのか。
気がついた職員がいたが、忙しくてそのままにしてしまったのか、気がついたが問題があると思わなかったのか、気がついたが注意しても聞く耳を持たない職員だから言わなかったのか。
誰も気がつかなかったとしたら、介護職同士のコミュニケーション、連携はどうなっているのか。薬の管理体制に不備はないのか。薬を持ち出す際には、どのようなチェック体制になっているか。そのチェック機能が働いていないのではないか。
などなど、さまざまな原因が考えられますし、原因はおそらく一つだけではないはず。悪者探しをするのではなく、教育や体制に不備があったら起きたことととらえることが大切だと思います。
■再発防止策
原因に応じて、職員の教育・研修の徹底、職員間のコミュニケーション活性化策、薬の管理体制の強化、チェック機能の徹底などを行います。このケースをよいターニングポイントにできるよう、職員全員が感じている、こうした事故への不安なども聞き取り、その不安を解消する策も考えるとよいのではないかと思います。
これはあくまでも私が考えた対応であり、「こうすべき」でも「これが正解」でもありません。しかしこうした重大事故があった際には、職場全体で、事実確認・原因究明・再発防止を考える必要があると思います。
最後に。
冒頭のメールにも書かれていますが、介護職が医療行為を行っていくのであれば、行えるだけの医学的知識習得が不可欠です。目の前の利用者から要望があったとしても、どうか安易に医療行為を行わないでいただきたいのです。医学的知識なしでの医療行為は、その利用者に危害を加えることになる危険があります。そのことを、介護職のみなさんにはよくよく心にとめておいていただきたいと思います。
※このケースの場合、認知症の利用者であり、その発言の信憑性について疑問を感じる方もあるかと思います。しかしこの記事上では、利用者の発言が事実であるという認識の上で構成しました。その点、ご了承いただければと思います。
もし、認知の利用者の発言で判断が難しいケースに遭遇されたことがある方は、どのように対処されたかをお聞かせいただければと思います。
※この記事への感想、事故について感じたこと、事故対応についての意見などをぜひこちらに書き込んでください。
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