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介護職の医療行為と事故対応について(2ページ目)

介護家族の方から、介護職の医療行為で起きた事件について、意見を問うメールをいただきました。このメールをもとに、介護職の医療行為と事故が起きた際の対応について考えたいと思います。

執筆者:宮下 公美子

誤った思いやりに注意

おそらく下剤を投与した介護職は、心の優しい、いい方なのだと思います。
便秘で苦しいといっている利用者を放っておけず、何とかしてあげたいと考えたのでしょう。そのように共感できることはすばらしいことだと思います。

しかし、取った対応は介護職としての役割を逸脱しており、許されることではありません。このケースでは幸い、命に関わることはありませんでしたが、利用者の体に大きな負担をかけることになりました。このような誤った思いやりが、時には利用者を生命の危険にさらすことすらあります。そのことを、介護職のみなさんには改めて心にとめていただきたいと思います。

このケースでの問題点を考えてみます。

■介護職が医療行為である投薬を行ったこと
まず驚いたのは、介護職が自分の判断で、家族にも看護師にも施設長にも医師にも確認せずに、下剤を投与したということ。投薬は当然ながら、医療行為です。症状はもちろん、年齢や体重、体調、アレルギーの有無などさまざまな条件を勘案して、どのような薬をどの程度投与するかを判断するには、病気と薬剤に関する専門知識が必要。ですから、介護職にはもちろん、看護師にも許されていません。いったい、どういう判断で投薬したのか? あってはならないことだと思います。

■薬の管理がずさんであること
この介護職は、利用者の症状を聞き、独自の判断で投薬してしまいました。投薬できたということは、薬の管理がずさんだということです。そもそも介護職が投薬の要不要を判断することはあり得ませんが、それでも、薬を手に取る際の流れが定めてあれば、そして薬の管理がしっかりしていれば、このようなことは起こらなかったと思います。そして、薬の数をしっかり管理していれば、「誰かが薬を使った」ことはすぐにわかるわけで、「一切そのような行為はしていない」というデイの回答もあり得ないと思います(もみ消していれば別ですが)。

■服薬状況の把握が不十分であること
デイでは、本人や家族の要望に従い、処方薬を預かり、服薬管理を行っていることが多いと思います。この方の場合、家族管理の下で下剤を必要に応じて服用していたために、デイ職員は下剤を服用していることを知らなかったようです。

しかし、このデイが、デイで預かっている薬=本人が投薬を受けている薬、と認識しているとしたらそれは危険な思いこみです。たとえ、この介護職が薬剤師の資格を持っていたとしても、日常の服薬状況を確認せずに、下剤は服用していないようだから服用させてみよう、という判断はあってはなりません(薬剤師ならそんな判断はしないと思いますが)。

また、デイに持ち込んでいない薬に関しても、どのような処方を受けているかなど、体調、病状と共に、服薬状況についても把握しておいた方が安心だと思います。

あってはならない判断が多い事例ですが、もしこのようなケースが起きてしまったら、どうするべきなのでしょうか? 私なりの見解を次のページに書いてみます。

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