「准介護福祉士」創設の本当の理由は
フィリピン人介護士受け入れのため?
実は、准介護福祉士創設の最も大きな理由は、フィリピン人介護士受け入れのためだといわれています。2006年、フィリピンとのEPA(経済連携協定)署名により、2008年度にもフィリピン人介護士受け入れが始まります。この協定では、フィリピン人介護士は一定期間内に介護福祉士の資格を取得しなければ日本で就労することはできず、フィリピンに帰らなければならない、という規定になっています。
そこで問題になったのが、養成施設ルートで介護福祉士取得を目指すフィリピン人介護士の扱いです。国会でも、日本人には養成施設ルートで国家試験を課す改正案が出ているのに、フィリピン人には国家試験を課さない、ということはないでしょうねと、議論になったことがありました(詳しくはガイド記事「フィリピン人介護士受け入れ、問題あり!」を)。このとき厚生労働省からは、この件についての明確な回答はありませんでした。
EPA署名の段階では、養成施設ルートは卒業と同時に資格が取得できることになっていました。それをいざ実際に受け入れる段になって、「実はその後、制度変更があり、養成施設卒業後、国家試験に合格しないと介護福祉士の資格は取得できなくなりました」とフィリピン側に伝えたら?
「話が違う」と反発される可能性が大きいでしょう。
そこで苦肉の策として出てきたのが、「准介護福祉士」です。
国家試験を受けなくても、国家試験に不合格でも働ける資格を設けて、フィリピンとのEPAの内容と実際に、整合性を持たせようというわけです。
フィリピンとのEPAの署名交渉をやってきたのは外務省。介護福祉士などの資格見直しを行っているのは厚生労働省の社会・援護局。介護保険関係の検討を行っているのは厚生労働省老健局。このように担当が違うため、さまざまな思惑が入り乱れて複雑化しているという側面もあります。
社会・援護局としては、次回、EPAの見直しの際に(まだEPAは発効もしていませんが!)フィリピン側と調整するなどして、できるだけ早く「准介護福祉士」資格をなくしたいという意向。しかし、フィリピン側とその調整をするのはおそらく外務省。
社会・援護局の思惑どおりに進めるのは簡単ではないと思います。
准看護師を見るまでもなく、中途半端な資格を導入してしまうと、それを統合していくのに多大な労力がいるものです。介護福祉士資格取得制度見直しとEPAによるフィリピン人介護士受け入れが重なってしまったのが不幸だった、というべきなのでしょうか。
まったく納得のいかない話です。
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