MSWの仕事とは?

相談援助職であるMSWの仕事というと、面接室で患者やその家族の話を聞く、というイメージ。しかし実際には1時間ほどじっくり時間をとって行う面接は、1日2~3件ほど。あとは、持ち込まれた相談を解決していくため、医師、看護師と話をしに院内を駆け回り、あるいは、転院先の病院や施設、ケアマネジャー、行政など他機関との連絡・調整に追われて過ごします。

Mさん
新卒でMSWのいない病院に、ただ1人、初採用のMSWとして入職したAさん。面談室もないところからスタートして、MSWとしての仕事を確立した
「患者さんが入院するときのインテーク(初回面接)は、必ず看護師と一緒に立ち会って患者さんの要望を聞きますから、それだけでも月に30~50件。MSWが行う延べの相談件数は、月700~800件ぐらいになりますね」というのはMさん。約300床のB病院でMSWとして勤務して8年。新卒で、B病院で初採用のMSWとして入職し、B病院でのMSWの仕事を一から作り上げてきました。たった一人で始めたMSWとしての仕事は院内で高く評価され、今ではB病院はMSW5人体制に。今後、さらに増やす方向だそうです。

「MSWとしての仕事を確立できたのは、入職して1年ぐらいたってから。最初は医事課に所属して、保険の請求業務や受付もやっていたんですよ」とAさん。当初、病院側からは、入院費未納の患者に対する督促業務もやってほしい求められたとか。

「でも、何でも屋になってはいけない、と肝に銘じて。MSWとしてやるべき仕事以外は、やんわり押し戻すようにしました。医事課の仕事をすべて、本来のスタッフに返すことができたのは、入職して3年目。人手が足りないと訴え続け、ようやく後輩が入職することになったのを機に、MSW本来の仕事に専念できる体制を整えたんです」とAさん。
どれも初採用のMSWならではの苦労です。

Hさん
前職の障害者施設で、指導員として純粋に利用者のためになる援助を考え続けた4年間の経験がMSWの仕事に生きたというCさん。AさんとはMSW同士の交流会で知り合って以来の友人
しかし、「先輩MSWがいるからと言って、ラクとは限らないんですよ。先輩がMSW本来の業務をこなせていない場合、それをすべて変えていくのも大変」というのは、Cさん。障害者施設で指導員を5年。その後、D病院に2人目のMSWとして入職し、先輩MSWの仕事の改善を行って9年間勤務し、この4月にケアマネジャーに転職しました。

Cさんが入職するまで、D病院では残念ながらMSWは「何でも屋」。入院患者が病棟で使うコップの請求業務から入院患者のカルテ作成まで、雑用に追われていました。

「相談業務もやってはいたのですが、あまり機能していなかったようです。入職して、イメージしていたMSWの仕事との違いに驚きました」とCさん。援助業務も社会福祉の知識もなかった先輩には、言われるままに仕事を受けるしかなかったのかもしれません。

「私もMSWとしての勤務は初めて。MSWの仕事の定義はわかっていなかったかもしれませんが、MSWの仕事だけでなく、病院の体制にも、改善した方がよいと思うことがたくさんあったんです。それで、コップの管理から、院内理髪店の利用の仕方から、変だと思うことはどんどん改善を提案して、新しいシステムに変えていきました。その過程では、いろいろ反発も受けましたが」とCさんは言います。

それでも、MSWの仕事と、あるべき病院像に強い信念を持って行動。
「言い続け、行動し続けることで、院内に新しいシステムとMSWの仕事を浸透させていきました」というCさん。これには、B病院のAさんもうなずきます。

「MSWの仕事をわかってもらうには、『患者さんで困ったことがあったらMSWへ』と、医師や看護師に言い続けることですよね。相談を回してもらう流れをつくって、トラブル解決の実績を積む。何ができるかを言葉で伝えながら、行動で示すことで時間をかけてわかってもらうしかありません。

MSWは、確かに直接、利益を生み出す職員ではないけれど、MSWがいることで、トラブルを未然に防いだり、トラブルを初期のうちに解決することができます。そうすれば、医師や看護師なども治療や看護という本来の仕事をやりやすくなりますし、病院の評判も上がります。そういう意味で、MSWは見えない利益を生んでいるんですよ」というAさんの言葉に、なるほど、と納得。

今もMSW不在の病院、あまり機能していない病院は多々ありますが、そういう病院って、患者満足度が低いんじゃないかなぁと思います。ところが、CさんもAさんも、問題なのは、「MSWを営業担当だと思っている病院」と、声をそろえます。

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