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『ホームヘルパーの医療行為』を読んで

原則的には禁じられている介護職の医療行為。難しいこの問題を、利用者、事業者、教職者、弁護士など17人ががさまざまな立場から論じた本を読んで、考えたことをまとめてみました。

執筆者:宮下 公美子

介護職の医療行為は、原則禁止されています。でも、介護の現場では、そんな建前論だけでは通らないのも事実。ではどうすればいいのか? 『ホームヘルパーの医療行為』という本を読みながら考えた、私なりの考えを書いてみます。

※医療行為については、平成17(2005)年7月に、厚生労働省から「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という通知が出され、専門的な管理の必要いない爪切りや耳垢の除去、自動測定器による血圧測定などは医行為に該当しないとの見解が示されました。紹介している『ホームヘルパーの医療行為』とこの記事は、その通知発布の前に書かれたものです。

【たんの吸引容認は介護職にとって福音か】

 2003年3月、このサイトの「あなたの一票」で
Q「グレーゾーンの医療行為、利用者の要望でも介護職がしてはマズイと思うのは?」というアンケートを行いました。
選択肢は下の4つ。
 A1「市販の結膜炎の目薬をさす」
 A2「水虫のある足の爪を切る」
 A3「水銀血圧測定器で血圧測定」
 A4「どれも介護職がしてもOKでしょ!」

 一番多かった回答は「どれも介護職がしてもOKでしょ!」の48%。続いて「してはマズイ」こととして「市販の結膜炎の目薬をさす」が24%、「水銀血圧測定器で血圧測定 」が17%、「水虫のある足の爪を切る」が11%。という結果になりました。

「どれも介護職がしてもOKでしょ!」を選んだ半数近い方たちは、どんな思いでこれを選んだのでしょうか? 他の3つの選択肢になっている行為が医療行為であることを知らない、という方もいるかもしれない。でもおそらくそれはごくわずか。

きっと、なぜこうしたことが「医療行為」とされ、介護職はやってはいけないと禁じられ、しかし利用者や家族からは当然のようにやることを求められ、現場の自分たちは後ろめたさを感じながらやらなきゃならないのだ、という怒りをこめて選んだ方が多いのではないかと思いました。

恥ずかしながら、私自身、介護職の医療行為がこれほど深く、難しい問題をはらんでいるとは、アンケートを設定した時点ではあまりわかっていませんでした。ヘルパー講座を受け、先生から繰り返し聞かされた「何か問題が起こって訴訟になったとき、絶対に勝てないのでやってはいけません」という言葉が、強く印象に残っていた、というのが正直なところです。

 そして、たまたま目にした『どこまで許される? ホームヘルパーの医療行為』(一橋出版/ヘルスケア総合政策研究所 篠崎良勝編著 以下、『ホームヘルパーの医療行為』と表記)という本を読み、「介護職による医療行為」についての深く、難しい問題をかいま見て、重苦しい気持ちになりました。

折しも、2003年4月22日、厚生労働省がALS(筋萎縮性側索硬化症)患者に対するたんの吸引を、一定の条件のもとでならホームヘルパーやボランティアにも容認する方針を固めつつあることが明らかになりました。

はたしてこれは、苦しむ利用者を前に手をこまねいていた介護職にとって福音なのか? 私はまた考え込んでしまいました。

→次は【介護職の職域が際限なく拡大される危険】
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