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アップオアアウトとは?コンサル業界の用語解説

コンサル業界でよく「アップオアアウト」という言葉を聞きますが、その意味についてはご存じでしょうか?日本語に直訳すると、「昇進するか、辞めるか」という意味になります。なぜこの言葉がコンサル業界でよく使われるのでしょうか。

執筆者:大石 哲之

<目次>

アップオアアウトの意味とは?

コンサルティング業界で使われる「アップオアアウト」とは?

コンサルティング業界で使われる「アップオアアウト」とは?


アップオアアウトとは、日本語に直訳すると、「昇進するか、辞めるか?」という意味になります。昇進しなければ辞めるというのは、終身雇用の会社の人にはまったく意味不明でしょう。

終身雇用のもとでは、出世は遅れたとしても、定年まではなんとか仕事をもらえるというのが原則です。長年勤めているのになかなか昇進できない人で、万年係長や、万年平社員といった表現がありますが、それでもなんとか係長という役職をまっとうして定年を迎えることも可能なわけですね。

昇進のラインから外れた人は、子会社出向にしたり、ラインではないポジションを作っての特任課長とか、専門課長とか、課長補佐とか、いろいろ呼び名はありますが、なんとしてでも、なんとか処遇しようというのが、終身雇用を敷いていた日本企業のやり方でした。
 

コンサルティング業界の「アウト」とは

コンサルティング会社の場合は違って、アップオアアウトという言葉があります。これは、昇進できなければ、居場所はないので辞めてもらうということです。先の例と比べて非常に厳しい方針です。

たとえば、私が入った外資系のコンサルティングファームでは、新卒で入社した場合、早い人で6年目から、通常でも7年目くらいから、マネージャーという地位に昇進を期待されます。昇進はその人の能力次第で決まるので、若い人でも実力が認められれば昇進するし、7年たっても実力が認められない人は昇進はしません。

問題になるのは後者の話です。コンサルティング会社では、10年たっても昇進できないが、でもそのままの役職でやるから長い目で見てね……ということはありえないのです。つまり新卒で入社してずっとマネージャーになれず、定年を迎えるということはありえません。

そういう意味では、決められた標準的な年数での昇進がクリアできないと、「昇進できなかった人」というレッテルが貼られてしまいます。
 

昇進できない場合は…

昇進できず、同じ地位にとどまることを「ステイ」と呼びます。ステイ1年目は「まあ運が悪かったとか、評価が出づらいプロジェクトだったからかわいそうだ。上がつまっている(ポジションがなかった)」と、多目に見てもらえるケースが多いのですが、2年目ともなると「なぜ2年も遅れているのだろう?駄目なんだろうね」というレッテルが貼られてしまいます。

強制的に解雇はされませんが、昇進しなければ給与も上がりませんし、仕事の幅も広がりません。同じ給与(もしくは下がる場合もあり)で、同期の人が昇進する中、下のランクの仕事をしないといけません。

3年もステイすれば、もう潮時というのがわかってくるでしょう。風当たりもつらくなります。
「ここで昇進できないままいるより、別の会社や職種でもっと活躍できる場を探したほうが、自分のためになりそうだ……」ということで転職していく、というのがアップオアアウトの「アウト」です。

解雇はされないけど、自分で限界を感じ、自分から辞めていく場合がほとんどです。プロのスポーツ選手が、人から言われなくても引退の時期を見定め、引退するのと一緒と考えていただくとわかりやすいかもしれません。コンサルタントという仕事はプロフェッショナルな色合いが強い分、向き不向きというものが他の職種よりもはっきりしています。

自分と職業の相性を早い段階で知ることが出来て、手遅れにならないうちに軌道修正できる、という意味でアップオアアウトは、飼い殺しにする人事制度よりもフェアのような気もします。
 

辞めた人みんなが「アウト」というわけではない

ただし、勘違いしてほしくないのは、やめる人が全員「アウト」の人ではないということです。
辞める人のうちアウトは1割もいないのではないでしょうか。私のように、起業のためにやめた人もいますし、他のファームにより高い給与で移籍した人もいますし、クライアントに引っ張られて転職した人もいます。中には選挙にでるため辞めた人もいます。このように多種多様なキャリアがあり、辞める理由はさまざまです。

アウトがほとんどというように思われがちですが、むしろアウトはごく少数で、ほとんどがポジティブな辞め方をしていると思っていただいたほうがいいと思います。
 

アップオアアウトでないコンサルティングファームもある

また、ファームの中には、アップオアアウトではなく、かなり長期的な視点で人材を育成しているところもあります。1~2年でアウトではなく、もうすこし緩やかに仕事ができるポジションを作って、長期的に実力をあげてもらうという考え方をとっているところもあります。すべてのコンサルティングファームが、アップオアアウトではないので、勘違いしないでいただきたいと思います。

ただし、アップオアアウトでない会社であっても、実力があがらないのに年功で給与も上がるということはないので、そこも勘違いしないでください。新卒レベルの仕事で5年働くことができても、給与も新卒レベルなわけです。仕事の内容と給与がほぼ一対一で対応しているというのは、アップオアアウトの会社でもアップオアアウトでない会社でも違いはありません。

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