現在、野中さんは、地球規模で環境問題を考えるNPO法人ガイア・イニシアティブの代表を務めていらっしゃいます。エコブームの昨今、野中さんの考える環境問題とは? 「子どもたちのためにも、いい社会を作っていきましょう」という熱い思いを、母親の視点で語ってくださいました。
東京都出身。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。NHK・テレビ東京等で番組キャスターを務めた後、企業のアドバイザーや社外取締役、三洋電機会長などを歴任。また、財務省・法務省・文部科学省等で、審議会委員会を務める。2007年8月にNPO法人「ガイア・イニシアティブ」を設立、代表を務める。 撮影/福村順平 |
カビの生えた大福
―(ガイド)野中さんは、お子さんを授かったときに、食品の安全性についてより強い関心をもたれたそうですね。野中:昔は、キッチンの流し台の下の扉を開けたら、おしょうゆのビンの口にカビが生えていることがありました。だからみんな、おしょうゆに限らず食べ物にカビが生えないように上手に使い切る知恵を持っていたんです。今は、大量に買いだめして何日置いておいてもカビも生えない。便利さ、効率の良さを追求するうちに、気付いたら命が生きにくい環境を作ってしまったのですね。
私が子どもの頃、棚に入っているおやつの大福はだんだん固くなって、3日目にはとうとうカビが生えていました。すると祖母が大福を手で割って、「中は大丈夫だから」って言ってカビを落として、割り箸を刺して網の上で焼いてくれるんです。そうすると香ばしくておいしく食べられる。こんな風に、日々の暮らし中で、他の生命の存在や、自分の命の守り方を自然に教えてもらっていたんですね。
「環境問題」とは生きることそのものだと思います。私にとって、それは昔から一貫したテーマでした。でも結婚して、自分が新しい命を授かった時、改めて環境問題がより身近で大きなテーマとなりました。私が口に入れる食べ物がそのまま、新しく生まれようとしている命につながっていく。それで、保存料や着色料がいっぱいでカビも生きていけない食べもので命をつくるなんてとんでもないことだとあらためて感じたんです。
次に野中さんならではの視点で送られた妊娠中のお話をうかがってみました。>次ページへ