「支配人着任後は、従業員のモチベーションアップのために試行錯誤を繰り返していました。今では全員が、活き活きと働いてくれています。ですから、一番うれしいことは、お客様に従業員を褒められること。(永末さん)」ホテルへ入れば、ホテルマンが輝く笑顔で迎えてくれる。 |
自分の中で日々戦っています ~ホテルマンに向いている人~
みなさんがご存知の通りホテルは接客業ですから、ホテルマンは人が好きな人でなければ、務まらない仕事です。とにかく「人間」が好きな方。そして、人との出会いを大切にすることができる方はホテルマンに向いているのではないかと思います。ホテルの仕事は、「技術」よりも、どちらかといえば常にやさしさを自分の中で持ち続けることができるかどうかが大切。ホテルの語源は、親切にもてなす、という意味の「ホスピタリティ」。その語源の通り、相手を思いやり、相手が何を求めているのかを考え、どれだけプロとしての奉仕精神を持っているか。この点は、もともと備わっている人は少ないのではないかと思います。必要なことは、それを自分の力として持とうと、日々努力すること。もう一つ大切なことは、モチベーションコントロールができる人であること。仕事をしていたら、その間に私生活でいろいろなこともあるでしょうし、体調やバイオリズムの変化もあるでしょう。ですが、一旦仕事となった瞬間には、すべてを置いて、お客さまの前では常に笑顔でいなければなりません。私は、著書「情熱と感動の仕事術」では、前向きなことを書いていますし、仕事も前向きに取り組んでいますが、人間ですから、モチベーションが下がるときもあります。ですが、ホテルマンとして常に笑顔でお仕事をするために、私も、自分の中で、日々戦っています。ホテルマンの給料は、一般的にはあまり高くないといわれています(もちろん、例外もあるでしょうが)。ホテルトアロードの場合、初任給は165,000円から。入社後は年に1度の昇給があります。ただし、必ず年に1度お給料が上がるわけではなく、能力に応じてのアップになります。土日は、基本的には出勤しなければならない仕事ですし、お給料も決して高くはない。だからこそ、心の奥底から奉仕精神を持ち、ホテルの仕事にやりがい、生きがいを感じる方でなければ、務まらない仕事なのだと思います。逆を言えば、それでもホテルマンを続けているということは、本心から「お客さまをおもてなしする」ことに、やりがいと喜びを感じている、本物のホテルマンなのではないでしょうか。
チャンスは、誰にでも同じだけめぐってくるもの ~メッセージ~
私は学生時代、成績がよく、勉強ができたタイプでもありませんでしたし、20代のころは、特にキャリア志向でもありませんでした。当時の日記などを読み返してみると、とてもネガティブなことが書かれているので、自分でも驚くことがあります。20代後半はずっと、自分は何にも出来ないと思っていました。それが、30歳を迎えたときに支配人のポストに就き、最近では著書を出させてもらうなど、今までの自分では考えられないステップアップをはかることができました。私も、まだまだキャリアを積んでいる途中ですが、今までの自分を振り返ってみると、やはり、チャンスはどなたにでも同じだけめぐってくるのだと思います。ただ、それに気づくか気づかないか、やってみるかやってみないかの違いだけ。実力はあとでついてくるものだと思いますので、今「私は、これができない、あれができない」と消去法で考えるのではなく、まず自分がやりたいことを見つけていただきたいな、と思っています。私は従業員にもよく言うのですが、自分自身が子どものころから、何が好きで、何が嫌いで、何に満足をして、何が成功体験だったのかということを思い浮かべ、その上で自分の生きる指針をハッキリとさせてしまうと、気持ちはとても楽になると思います。その中で今の自分にできることに、ぜひ取り組んでみてください。20代後半、あんなに悩んだ時期があった私でも、今は楽しんで仕事ができているのです。きっとどなたでも、楽しく仕事をすることはできるはずだと思っています。もしも、今の自分に悩んでいらっしゃる方がいらっしゃれば、ぜひがんばっていただきたいですね。
【編集後記】
最後のメッセージは、20代後半、色々なことに悩み、それを乗り越えた永末さんらしい、想いの伝わるメッセージでしたね。20代後半から30代、この時期に、どれだけ自分を正直に向き合い、仕事に取り組むか、その成果はきっとその後の人生に大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。今回、永末さんにお話をお伺いしていて、「悩むことから逃げないこと」の大切さを教えていただいたような気がします。