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有給休暇と年休に関するQ&A(2ページ目)

年次有給休暇に関連してのQ&A、続編です。基礎知識編、Q&A(vol.2)に続けてお読みください。

執筆者:西村 吉郎

Q 退職間際に有給休暇をとれるか

有給休暇が20日分ほど残っています。これを退職間際に消化しようと思うのですが、可能でしょうか。なお、私は一介の販売員であり、後任に引き継ぐほどの業務はとくにありません。
             
A 法律上問題ないがモラルとして疑問   

労働基準法によると、労働者は年次有給休暇(年休)をいつ、どのような目的で取得しようと構わないことになっています。

この労働者側の時季指定権に対して、会社側には年休を取る時季を変更することができる時季変更権が与えられています。ただし、この時季変更権を行使するには、「事業の正常な運営を妨げる」と判断されるだけの客観的な理由が必要とされますので、退職間際だからという理由だけで年休を取る時季を変更することは認められません。また、退職間際では代わりの時季を指定することはできないわけですから、その点でも、会社が時季変更を行使することは不可能ということになります。

結論をいえば、退職間際であっても、有給休暇を取ること自体には問題はないということです。しかしながら、残務整理や引継ぎをなおざりにしたままでは会社としても困ってしまいます。そこで、会社としては、残った年休の一部について、消化を見合わせるよう協力を要請してくることになるでしょう。

あなたの場合でも、得意客や売り掛け伝票の整理・引き継ぎなど処理すべき残務はあることでしょうし、棚卸しなどで、店としてはできるだけ多くの人手が欲しい時期だと、このような要請があるかもしれません。応じる義務はありませんが、退職するに当たって、周囲に迷惑をかけないよう配慮することは、社会人として守るべき最低限のモラル。素直に協力すべきです。

Q 年休を消化するならと退職日が繰り上げに

退職の意思表示から2週間で残務整理を終え、その後に年休の未消化分12日を取得する計画で上司に打診したところ、年休をとるくらいならその分早く退職するようにとのことで、退職日を繰り上げさせられてしまいました。

A 法的には問題があるが円満退職が先決

有給休暇は、すでに退職することが決まっている人でも、退職日までにその権利を行使することはいっこうにかまいません。しかし、退職するにあたっては業務の引継ぎや残務整理などやるべきことはたくさんあるはずで、これらをなおざりにしてまで休暇をとるのは決してほめられたものではありません。

ところで、残務整理をしっかり済ませた上で年休を取得したいという申し入れに対して、これを認めず、退職日を繰り上げるとする会社の扱いは、もし、会社が消滅する年休に応じた金銭を支払うというのであれば問題のない措置といえますが、年休の買上げもなく、年休消化を阻止したいがために退職日繰り上げを強要するあなたの勤務先の対応には合理性がないというべきです。退職日の設定は、就業規則等の規定を遵守する限り、労働者において任意に設定でき、年休の取得もそれを考慮して任意に消化できるものだからです。

ただし、有給休暇の消化を目的に退職日を先延べしようとするあなたの行為も誠意を欠くといわざるをえません。素直に会社の意を汲んで、円満に退職する道を選ぶのも一つの道といえるでしょう。
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