借金があれば、その借金も引き継がなければならない
突然ですが、ここで問題です。○か×か考えてみてください。
<Question 1>
「正の財産」と「負の財産」を同時に引き継ぐのが相続の大原則 |
<Question 2>
10年前に父から1000万円の資金援助を受けて、新築マンションを購入しました。贈与税対策として援助分に相当する割合を持分として共有名義で登記したのですが、その父も高齢で亡くなってしまいました。そのため、当該マンションの所有者(共有名義者)である長男の私が、父の名義を引き継ぎ住み続けたいと考えています。
しかし、弟(次男)と妹(長女)が「不公平だ!」として反対しています。私(長男)も次男も長女も法定相続人であり、相続分は均等との主張です。やはり、マンションを売却(現金化)して、兄弟仲よく均等分割しなければならないのでしょうか?
<Question 3>
共働きの夫婦です。子供はいません。かなり価格も割安感が出てきたことから、つい先日、中古マンション(100%夫名義)を購入しました。ところが、交通事故で突然に夫が他界し、相続が発生することになりました。実は、主人と私はいわゆる「事実婚」で、入籍はしていませんでした。
私は内縁の妻として夫を支えてきた慰労の意味も兼ね、このマンションを相続したいと希望しています。ただ、夫(被相続人)の両親は健在で、また、兄弟も数人います。この場合、私の主張は認められるでしょうか?
相続人同士でもめないようにするのが最優先課題
ありがちなケースを3パターン挙げてみました。まず、1番目の答えとして、相続では「正の財産」と「負の財産」(借金)いずれも引き継がなければなりません。逃げ道として、相続人全員の同意が得られれば、受け継ぐ資産を限定することができますが(限定承認)、たとえ連帯保証債務であろうと大原則は引き継がなければなりません。相続とは必ずしも“都合のいい”ことばかりではないのです。
次に、法定相続割合による遺産分割はルール上の取り決めであって、絶対にその割合でしか相続できないということではありません。遺言書があれば、この内容が優先されます。また、「遺留分」という制度もあります。遺言で相続対象を無制限に認めると、他の相続人に不公平が生じる恐れがあります。そこで、最小限度の相続割合を約束したのが「遺留分」です。どれだけ被相続人の面倒を見てきたか、こうした苦労の度合いによって相続割合を定めるのも一法でしょう。
そして、3番目は「事実婚」についての取り扱いです。お気持ちは理解できるのですが、この場合、残念ながら相続は難しいでしょう。いくら同棲期間が長くても、同居人の範ちゅうを超えることはできないからです。そもそも、内縁の妻には遺産を相続する権利自体がありません。遺贈(遺言による財産分与)によるなど、一部の方法を除いて権利を主張することは認められないのです。
それだけに、相続を円滑に進めるためには、遺産分割で争いを起こさないための事前対策が欠かせなくなります。「縁起でもない」「まだ早い」―― 決して、そのようなことはありません。早ければ早いほど、相続計画はより有効なものへと精度を増していきます。
<Answer 1> 「正の財産」と「負の財産」を同時に引き継ぐのが相続の大原則。よって、借金があれば、その借金も引き継がなければならない。 <Answer 2> 法定相続割合による遺産分割はルール上の取り決めであって、絶対にその割合でしか相続できないということではない。 <Answer 3> 内縁の妻には遺産を相続する権利が認められていない。残念ながら、「事実婚」では遺産を引き継ぐことは難しい。 |
次回は、相続税における分譲マンションの財産評価方法をご紹介します。