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不動産仲介「両手取引」禁止 民主政権公約(2ページ目)

7月27日、民主党からマニフェストが発表され、「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止する」という表現が盛り込まれました。一体なぜなのでしょう、その真相を探ってみました。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

仲介業者が一度に受け取る報酬は「6%+12万円」


なぜ、民主党はマニフェスト(政策集INDEX2009)に「両手取り引きの原則禁止」を盛り込んだのか。その意図とは一体、何なのか?―― この点が議論されるべき最も重要な部分です。

そもそも「両手取り引き」とは、不動産業者が宅地・建物の媒介(仲介)を行った際、契約が成立した報酬として宅地・建物の「売り主」と「買い主」の双方から仲介手数料を受け取る取引形態のことです。下図のように、「売り主」と「買い主」の両者の取り引きを“同一”の業者が引き受けることで、このような現象が起こることになります。

不動産仲介業者から見た仲介手数料の流れ


現行の宅建業法では、不動産仲介の手数料(媒介の報酬額)について上限が設けられており、国土交通大臣の告示によって売買の媒介の場合には、宅建業者が依頼者の一方から受けることができる報酬額の上限は、

  成約価格×3%+6万円(別途、消費税)

と決められています。同一の業者が「売り主」「買い主」それぞれから受け取れることになるため、最終的には「成約価格×6%+12万円(別途、消費税)」の手数料を仲介業者は受け取ることになります。

改めて、なぜ、政策集INDEXでは「売り主」「買い主」それぞれから報酬を受け取ることを原則禁止にしようとしているのか?―― ここで筆者の脳裏をよぎるのが、双方仲介による利益相反の懸念です。

少しでも高く売りたい「売り主」 VS 安く買いたい「買い主」


想像してみてください。売り主は自分の不動産を少しでも高く売りたいと考えています。これに対して、買い主は希望にかなった不動産を少しでも安く手に入れたいと思っています。どちらも、極めて自然な人間の摂理です。

この矛盾を一つの業者が、どちらにも不利にならずにどうやったら解決することができるのでしょう。ダイエットしたいけれど、甘いものも食べたい ――。こうした悩める女性が抱えるジレンマそのものです。まさに、「あちらを立てれば、こちらが立たず」なのです。ここに、両手取り引きを原則禁止にする意図が隠されています。

立場によって色々な考え方があるでしょう。「両手取り引きは合法であり、利益相反はモラルの問題」との意見も聞こえてきそうです。本来、政治介入によって解決策を探すのではなく、業界の自浄作用によって自然と消費者保護の流れが形成されるのが理想です。この原則禁止が実現するかどうかは流動的ですが、これを契機に何らかの“落とし所”が見つかることを願ってやみません。

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